研究課題
基盤研究(C)
【マクロファージにおけるOSMの発現調節機構とHIF-1aの関与についての解析】ヒト単球様細胞株(THP-1細胞)をPMAで48時間処理することによりマクロファージ分化させた(THP-1マクロファージ)。LPSはOSM遺伝子およびOSMタンパクの発現を用量依存的に促進した。LPSによるOSMの発現誘導は選択的COX-2阻害剤の添加により有意に抑制された。また、THP-1マクロファージにおけるCOX-2の発現はLPSにより強力に誘導され、PGE2の添加はOSMの発現を有意に促進した。さらに、EP4阻害剤であるL161,932によりLPSによるOSMの発現誘導が有意に抑制された。したがって、THP-1マクロファージにおけるOSMの発現誘導にはCOX-2の発現誘導を介する内因性PGE2の産生が関与しており、さらに、EP4受容体を介してOSMの発現を上昇させることが示唆された。THP-1マクロファージにおいてLPSがHIF-1aの遺伝子発現を誘導するとともにOSMの遺伝子発現を上昇させることが明らかにされた。また、Dimethyloxalylglycine (DMOG)とLPSの同時添加では、HIF-1a蛋白の発現上昇と共にcyclooxygenase-2 (COX-2)の蛋白発現も増加した。 Cobalt chloride (CoCl2)の前処理によりHIF-1a蛋白の発現が増加したが、その後のLPS添加ではHIF-1の発現は影響されなかった。また、CoCl2によるHIF-1a蛋白の上昇はLPSによるOSMの分泌誘導にも影響しなかった。マウスマクロファージ様細胞株(RAW264.7細胞)においては、CoCl2の前処置によりLPSによるOSMの遺伝子およびOSMタンパクの発現誘導が有意に増強された。また、CoCl2の前処置によりLPSによるCOX-2の発現も増強された。以上のことから、少なくともマウスのマクロファージ系細胞においてHIF-1aはLPSによるOSMの誘導を促進する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
マクロファージに由来する血管石灰化促進因子oncostatin M (OSM) の発現調節機構について、LPSによるOSMの発現調節経路(LPS-TLR4-COX2-PGE2-EP4受容体-OSMの発現)を明らかにした。また、HIF-1aタンパク発現の増加により、LPSによるOSMの誘導反応が増強されたことから、HIF-1aがOSMの発現調節に関与していることが示唆された。以上の成果からおおむね順調に進展していると判断する。
今後はマクロファージに由来するOSMの血管平滑筋細胞への作用(骨芽細胞への分化促進作用)の検討とin vivoでの動脈硬化モデルマウスを用いたHIF-1aの役割の解析を予定どおり行う。
少額のため次年度に繰り越す実験試薬の購入にあてる
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J Atheroscler Thromb
巻: 21 ページ: 346-354
Am J Kidney Dis
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10.1053/j.ajkd.2013.02.362.