研究課題/領域番号 |
25461377
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
岩本 禎彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (10232711)
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研究分担者 |
中山 一大 自治医科大学, 医学部, 講師 (90433581)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脂質異常症 / 分子間相互作用 |
研究概要 |
ゲノムワイド関連解析(GWAS)によって新たに見出された血中トリグリセリドレベルに関連する遺伝子のひとつTRIB1の機能解析を行った結果、TRIB1は様々な転写因子やシグナル伝達分子との相互作用を介して、脂質合成の調節を行っていることが明らかになった。TRIB1を肝臓で強制発現させる実験では、脂質合成のマスター転写因子であるMLXIPLとの分子間相互作用の発見に至った。この相互作用の結果、ユビキチン・プロテアソーム系におけるMLXIPLの分解が促進され、脂質合成が負に制御される。また、GWASによって関連が見出されたゲノム領域の周辺には、TRIB1の発現を調節する配列が存在し、その配列のバリエーションが発現レベルの差をもたらすことが明らかになった。 この結果から、TRIB1は様々なターゲット分子との相互作用を介して、脂質代謝の調節を行っている可能性が示唆された。それを新たに同定する目的で、イースト2ハイブリッド法を用いたスクリーニングを行った。得られたターゲット候補分子をノックダウンするアデノウイルスベクターを構築し、マウスに導入して機能的スクリーニングを行った結果、1つの分子の肝臓での発現低下が、血清脂質の有意な減少をもたらすことが明らかになった。現在、この分子メカニズムを明らかにするために実験を重ねている。 GWASによって見出された血清脂質関連ゲノム領域の中で、未だに機能性分子が同定されていない領域がある。NCAN-CILP2領域は19番染色体短腕の約300kbの強い連鎖不平衡ブロックの中に、10遺伝子と1miRNAをコードしている。10遺伝子の中で肝臓発現遺伝子に着目し、アデノウイルスベクターを用いたマウス肝臓でのノックダウン実験を行った結果、2つの遺伝子の発現低下は血清脂質の有意な変化をもたらした。現在、そのメカニズムを明らかにするための実験を遂行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度に予定していた計画の内、①遺伝解析に基づいて同定された血清脂質関連遺伝子における機能性多型の探索は、TRIB1遺伝子の発現制御配列の同定によって、一部、達成された。現在、新たな目標にしているNCAN-CILP2領域の機能性多型は、機能分子同定後に同定する予定である。②新規脂質関連遺伝子の機能的検証ならびに関連する代謝パスウェイの探索は、現在、次のような同定途上にある。GWASによって見出された血清脂質関連ゲノム領域の中で、未だに機能性分子が同定されていない11遺伝子がコードされているNCAN-CILP2領域の探索を行い、2つの候補遺伝子まで絞り込むことが出来た。③新規脂質関連遺伝子産物が関与する分子間相互作用の探索では、TRIB1と相互作用する分子の中で、血清脂質レベルに影響を与える新規分子を同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
①新規脂質関連遺伝子産物が関与する分子間相互作用する新たな分子の血清脂質調節における機能的検証: TRIB1と相互作用することが明らかになった分子の中で、その発現低下が血清脂質レベルを変化させる分子については、その過剰発現系についても構築し、機能的検証を更に進める。②新規脂質関連遺伝子の機能的検証と関連する代謝パスウェイの探索: NCAN-CILP2領域における機能分子の絞り込みをさらに進め、脂質レベル調節の新規代謝パスウェイの同定を目指す。③血清脂質関連分子の遺伝学的検証: TRIB1と相互作用することが明らかになった分子、NCAN-CILP2領域における機能分子が同定された後、それらの遺伝的バリエーションが血清脂質レベルに影響するかどうか、SNP関連解析やレアバリアントの解析を行う。
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