研究課題
家族性高コレステロール血症(FH)は、臨床上頻繁にみられる遺伝性疾患で、LDLコレステロールの上昇、黄色腫、そして早発性冠動脈疾患を合併する。原因遺伝子としてはLDL受容体遺伝子異常が全体の60-70%で、LDL受容体以外の原因の解明が急務である。近年、LDL受容体関連遺伝子としてLDLR adaptor protein1(LDLRAP1)やproprotein convertase subtilisin/kexintype9 (PCSK9)が同定された。申請者らが国内で独占的に行っている安定同位体を使ったトレーサー実験によって、PCSK9変異によるFH患者のアポ蛋白代謝異常とスタチンによるアポ蛋白代謝改善効果を明らかにするために2名のPCKS9変異ホモ接合体患者に対してトレーサー実験を実施した。加えて、1名の患者についてはスタチン治療後にトレーサー実験を再度実施した。その結果、VLDL, IDL, LDL apoBの異化速度はそれぞれ3.04/4.43,2.46/6.12, 0.203/0.232 pools/dayといずれも低下していた。特にLDL apoB FCRはLDL受容体遺伝子異常ホモ接合体と同程度の値であった。スタチン治療ご、VLDL, IDL, LDL apoB FCRはそれぞれ4.43→5.89, 6.11→8.93, 0.232→0.450 pools/dayと改善した。中でもLDL apoB FCRは正常化した。通常、LDL受容体遺伝子ホモ接合体ではスタチンの効果はほとんど認めないことからPCSK9遺伝子異常ホモ接合体の特徴と考えられた。代謝経路の詳細な検討を行っている段階である。
2: おおむね順調に進展している
上記のように、2名のPCSK9遺伝子異常ホモ接合体家族性高コレステロール血症(FH)患者の同意を得て安定同位体を使ったトレーサー実験を行なった。これは世界で初めての研究である。また一人の患者についてはスタチン治療後に同様なトレーサー実験を実施することができた。
PCSK9遺伝子異常ホモ接合体型FHは極めて稀な疾患でありこれ以上の患者のリクルートは予定していない。アミノ酸のトレーサー実験とともに、安定同位体標識グリセオールとブドウ糖によるVLDL中性脂肪とブドウ糖代謝も実施しており解析と進める予定である。またmulticompartmental modelを使った代謝パラメーターの算出とともに詳細なmetabolic channellingも検討する。
当初予定していた脂質測定項目が不要となり、その他の消耗品等で使う予定であったが申請等に時間がかかり使えなかったため
本年度は最終年度落としてより積極的に学会発表を行なう。その為の経費として使用したい。
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