研究課題
PCSK9変異(E32K)ホモ接合体患者2名について安定同位体を使ったトレーサー実験を実施した。早朝空腹時に、2H3ロイシンを1mg/kg静注し48時間後まで頻回に採血した。血清分離後、超遠心法でVLDL、IDL、LDLに分離してそれぞれの分画のアポ蛋白Bをイソプロテレノールで沈殿、塩酸処理、誘導化(derivatization)を行い、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)でtracer/traceeを測定した。アポ蛋白B(apoB)の代謝パラメーターはまずSAAMIIを使ってmulticompartmental modelを開発し、それぞれのtracer/traceeを入力して算出した。また、metabolic channnelingについてもSAAMIIを使って検討を行った。2名のうち1名についてはスタチン治療後に同様の実験を実施した。また健常者8名に対しても同様の代謝実験を実施した。血清脂質値は、PCSK9変異患者では患者①でTC/TG/HDL-C/LDL-C=394/260/28/314mg/dl、患者②では332/247/43/208で健常者の平均は185/92/52/119mg/dlであった。また患者②ではスタチン治療後PCSK9変異患者の脂質は、217/145/46/131mg/dlと改善を認めた。VLDL apoBの異化(FCR)は健常者に比較して患者①で64%、患者②で48%遅延、産生速度(PR)はそれぞれ142、126%増加した。同様に、IDL apoB FCRは72、31%遅延し、PRは104、70%増加した。最後にLDL apoB FCRは、55、49%低下、PRは4%増加と7%低下した。患者②でスタチン治療後、VLDL apoB FCRは改善、IDL、LDL apoB FCRは正常化した。metabolic channelingに関しては、健常者に比較してPCSK9変異患者は2人ともVLDLがレムナントに移行してIDLへと変換されず直接除去されることが明らかになった。スタチン治療によってもmetabolic channelingの特徴は維持された。以上より、PCSK9変異による家族性高コレステロール血症(FH)患者は、LDL受容体変異によるFH患者とは異なる代謝異常を有することが明らかになった。
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