研究課題
基盤研究(C)
この年度内に中枢性甲状腺機能低下症15例の遺伝子解析を行い、IGSF1異常による中枢性甲状腺機能低下症の7例を同定した。その結果、1個の遺伝子欠損、2個の終止コドンへの変異(Q648X, R1189X)、1個のフレームシフトを起こす変異(p.G1085Wfs39X)、1個のアミノ酸置換の変異(p.V1082E)、1個のスプライシング異常を起こす変異(c.2335+1G>A)を同定した。大きな欠損以外の変異はすべてIGSF1のC末に存在し、C末端の重要性が示唆された。このうち4例は母が変異の保因者であり、X連鎖性を確認でき、遺伝カウンセリングに有用な情報を得ることができた。その臨床像であるが、7例中4例は新生児マス・スクリーニングを契機に診断に至った。残り3例であるが、1例は哺乳不良、便秘、1例は低身長、精神運動発達の遅れ、1例は低身長、頑固な便秘により診断を受けている。また3例で思春期年齢でもあるにもかかわらず、二次性徴の出現が遅れ、LH/FSHの上昇を認めない、いわゆる思春期遅発症を発症した。また精巣容量が正常成人男性よりも増大していた。内分泌学的には全例甲状腺刺激ホルモン(TSH)欠損、5例にプロラクチン(PRL)損、2例に成長ホルモン(GH)の欠損を認めた。以上より、この年度において1) IGSF1遺伝子変異はIGSF1のC末に存在すること、2)新生児マス・スクリーニングでは全例発見できないこと、3)臨床的な特徴として成長障害、重篤な場合には精神発達の遅れ、4)思春期以降は思春期遅発、精巣容量増大、5)欠損ホルモンはTSHに加えPRL、場合によってはGHも欠損するという特徴を明らかにすることができた。
2: おおむね順調に進展している
今回の研究目的は我々が新たに同定したImmunoglobulin superfamily 1 (以下IGSF1)異常によるX連鎖性先天性中枢性甲状腺機能低下症の疾患概念を確立するとともに、その病態生理を解明し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)およびプロラクチン(PRL)の分泌制御に関わる生理的IGSF1の働きを知ることである。1年目において上記の記載したように、臨床病態、欠損ホルモン、遺伝子異常との関連についてほぼ解析することが可能であった。従って概ね1年目の目標は到達したと考えられる。
今後はさらに病態把握、実態調査を行うために、アンケート調査による全国的な発症について検討する予定である。現在までIGSF1の機能は不明であるが、インヒビンのコレセプターとして同定された経緯がある。今後下垂体由来培養細胞においてIGSF1、インヒビン、アクチビンとの相互作用、機能について検討を加える。思春期遅発についても、下垂体ゴナドトロープ由来細胞を用いて、LH, FSHの分泌とLGSF1の関係を解析してゆく。精巣腫大のメカニズムについてはまず、マウス精巣での、IGSF1を胎児期から成獣期まで免疫染色にて検討し、その発現細胞、部位、量を検討し、生理的役割を検討することから、その機序の解明に取り組む。
今回遺伝子解析の費用のみで経過したため、消耗品の購入が予定よりすくなく、の当該助成金が発生した。現在培養細胞を用いた実験が進行しており、次年度以降は費用は増加すると予想される。よって試薬の購入などすべて消耗品として使用することが可能である。
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