研究課題/領域番号 |
25461380
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田島 敏広 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50333597)
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研究分担者 |
棚橋 祐典 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50374228)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中枢性甲状線機能低下症 / IGSF1 / TGFB / 変異 |
研究実績の概要 |
1.遺伝子解析 中枢性甲状腺機能低下症の6名のIGSF1遺伝子を解析し、その異常について検討した。1名にエクソン14に終止コドンの変異を同定した。この変異は新規の変異であった。この変異によりnonsense mediated decayがおこり、mRNAの発現は起きないことを確認した。患者は生後6け月の成長不良、発達不良でみつかっており。本疾患の早期発見、治療の重症性が示唆された。 2.In vitro解析 IGSF1はインヒビンのコレセプターの可能性を示唆している論文もあり、アクチビン、TGFβなどの作用に関与する可能性も示唆されている。下垂体前葉ホルモン産生細胞の増殖・分化がアクチビン、インヒビン、TGFβなどによって制御されていることは知られている。そこでGH3細胞にPRLプロモーター-ルシフェラーゼベクターをトランスフェクとし、アクチビン刺激による活性化を検討したところ,既報の報告のように活性化された。IGSF1を共発現させ、TGFβ, インヒビンにより、プロモーター活性を検討したが、変化は認められなかった。 TGFβのbetaglycanを介したシグナルはSmad2, 3を活性化したのち、細胞膜より離れ、common mediator SmadであるSmad4と複合体をつくり、核内に移行する。Smad結合エレメントを持つルシフェラーゼベクターpGL4.48 [luc2P/SBE/Hygro] (Promega社)を用いて、TGFβによる活性化にIGSF1が作用を示すか検討を行った。COS細胞にpGL4.48をトランスフェクトし、TGFβで刺激、ルシフェラーゼ活性を測定してところ、明らかに上昇を認めた。この系にIGSF1を発現させ、IGSF1のTGFβに対する作用への影響を検討したが、その結果ではIGSF1では有意差はみとめなかったものの、刺激作用が抑制された。このようにIGSF1はTGFβによる細胞シグナル伝達にに関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.中枢性甲状腺機能低下症におけるIGSF1異常の意義を明らかにした。 2.IGSF1異常は重症であり、乳幼児期早期の成長障害、精神運動発達の遅れを示す。見逃された場合には永続的な精神発達の遅れを示すことを明らかにした。 3.IGSF1異常症の遺伝子変異は遺伝子欠損、変異であり、すべてC末に存在する。従って C末の重要性であることを明らかにした。また日本での変異のhot spotがないことも示すことができた/ 4.すべの症例プロラクチンの分泌不全を起こす。従ってIGSF1がプロラクチン分泌にも関与することが明らかになった。 5.IGSF1がTGFβを介してシグナル伝達に関与する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
1.本邦でのIGSF1異常症の頻度を明らかにするため、遺伝子診断を積極的に行う。小児内分泌学会、臨床遺伝子診療部全国会議などを通じてIGSF1遺伝子解析が研究として、倫理審査のもと行われていることを明らかにし、症例の集積を一層加速させる。 2.IGSF1異常症の患者では、TSH PRLの欠損に加え、GHも欠損している場合がある。POU1F1は下垂体前葉のthyrotrope, somatotorope, lactotropeに発現し、TSH, GH, PRLの発現、細胞の増殖に必須の因子であり、このPOUF1の異常により、TSH、GH、PRL欠損がおこる。そこでGH3細胞をアクチビンで刺激し、内因性のPOU1F1のmRNA、蛋白発現量の変化を、リアルタイムPCR, Western blotで検討する。上記の系にIGSF1を(一過性ならびに安定的に)発現させ、その変化を検討し、IGSF1とPOU1F1の相互作用の有無を検討し、IGSF1の生理作用の解明を進め る。 3.TGF- βスーパーファミリーは細胞の増殖、分化、アポトーシスの制御に重要な役割を果たしている。さらに多くの細胞の増殖を抑制あるいは、細胞外マトリックスの産生などにも関与する。TGFβがパラクラインに下垂体サイロトロープ、ラクトトロープに作用している可能性がある。したがってIn vivo 解析でその機序の解明を行う。正常マウスにおけるサイロトロープIgsf1発現の胎児期から経年的変化の検討、ノックアウトマウス(以下KOマウス)における下垂体TSH、PRL発現の変化の検討、サイロトロープのTGF- βの発現をreal time PCR, ウェスタンブロットにて検討してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者(学外)の下垂体組織の免疫染色について、研究代表者の研究室で、研究分担者と共同で行ったため、分担者の研究費を使うことなく、繰り越しを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の研究分担者が下垂体の免疫組織染色を行い、IGSF1の正常での発現細胞、経年的変化を検討する予定である。
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