研究課題
1)高血糖刺激によるCYP11B2発現・アルドステロン分泌亢進メカニズムの解明:CYP11B2プロモーター領域のdeletion mutants/point mutantを用いた検討から、副腎H295R細胞における高血糖刺激によるCYP11B2発現誘導が、同領域内-766/-759のNBRE-1を介して招来されることが明らかとなった。各種転写因子の発現変動を検討したところ、NBRE-1に結合する転写因子であるNURR1のmRNA発現が、高血糖刺激により著明に誘導されることが示された。NURR1のsiRNAをH295R細胞に添加したところ、高血糖刺激によるCYP11B2発現誘導が有意に抑制されることが認められた。以上の結果から、高血糖刺激により発現が誘導されたNURR1がNBRE-1を介してCYP11B2の発現を誘導することが明らかとなった。2)iNOS TGマウス・iNOS/RAGEダブルTGマウス腎病変とcyp11b2発現・アルドステロン分泌の連関の検討:我々は、野生型マウス、iNOS TGマウス、ならびにiNOS/RAGEダブルTGマウスのそれぞれに、離乳後から高タンパク・高カロリー食を投与し、定期的に尿中アルブミン・血糖値を測定した後に16週齢でsacrificeを行った。その際にDynabeads®を灌流することにより腎臓から糸球体を単離し、RNAの抽出を行った。それらのRNAを用いてDNAマイクロアレイを施行し、パスウェイ解析を行った。3)高血糖刺激によるCYP11B2発現亢進を抑制する新規薬剤のスクリーニング:昨年度に作成したCYP11B2プロモーター安定発現株(Mol Cell Endocrinol. 2014; 383: 60-68)を用いて、アンジオテンシンIIおよび塩化カリウム刺激を指標としたハイスループットスクリーニング(HTS)系を確立した。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要で示した様に、まず「1)高血糖刺激によるCYP11B2発現・アルドステロン分泌亢進メカニズムの解明」に関しては、当初の予定より更に詳細な検討を行うことが可能となり、高血糖刺激によるCYP11B2発現亢進におけるNURR1の関与を明らかにすることが出来た。「2)iNOS TGマウス・iNOS/RAGEダブルTGマウス腎病変とcyp11b2発現・アルドステロン分泌の連関の検討」に関しては、当初の予定には記載されていなかったDNAマイクロアレイ・パスウェイ解析を、これらマウスの単離糸球体から抽出したRNAを用いて施行することが技術的に可能となり、今後、各ステージの糖尿病性腎症における特異的な遺伝子発現変動が明らかとなることが期待される。「3)高血糖刺激によるCYP11B2発現亢進を抑制する新規薬剤のスクリーニング」に関しては、CYP11B2プロモーター安定発現株を用いたHTS系が確立し、東京大学創薬オープンイノベーションセンターからご譲渡頂いた化合物ライブラリーを用いてのスクリーニングが順調に進んでいる。以上の結果から、本プロジェクトはおおむね順調に進んでいると判断した。
平成27年度は、これまでの年度に引き続いて、iNOS TGマウス・iNOS/RAGEダブルTGマウスを用いた糖尿病性腎症の病態解明を進めるとともに、CYP11B2プロモーター安定発現株を用いたHTS系にて化合物ライブラリーのスクリーニングを進め、得られたヒット化合物の合成展開を行う。さらに、それら新規薬剤のiNOS TGマウス・iNOS/RAGEダブルTGマウスへの早期の投与実験を目指す。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
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