研究課題/領域番号 |
25461383
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
駒津 光久 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90221978)
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研究分担者 |
鈴木 悟 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (30222061)
西尾 真一 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (30467146)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インクレチン / インスリン分泌 / ブドウ糖 |
研究実績の概要 |
本研究課題の主題である「KATP非依存性経路とインクレチン相互作用によるインスリン分泌機構の解明」に関して、インクレチン作用の具体的なメディエーターであるcAMPの上昇が膵B細胞で、ブドウ糖によるKATPチャネル非依存性のreadily releasable pool(RRP)の増加作用をブドウ糖の濃度依存性に増強することが本質であることを示す新たな実験結果をえた。すなわち、ラットラ氏島を完全に細胞外Caをキレートした緩衝液で45分灌流(前処置)し、その後通常のCa濃度の緩衝液にもどし、高濃度Kによる細胞内Ca濃度の上昇によるインスリン分泌の経時的変化(Ca刺激性分泌)を灌流実験で詳細に検討したところ、前処置中のブドウ糖濃度依存性にCa刺激性分泌を増量し、この作用は前処置中にcAMPを増加させることでさらに増強された。興味深い事に、ブドウ糖濃度の増加はCa刺激性分泌のピークまでの時間は変えずにその高さを増加させたのに対して、cAMPはその高さのみならず、ピークまでの時間を短縮した。この事実はインクレチン作用がブドウ糖と相乗的に、かつ別のメカニズムで膵β細胞のRRPを正に制御していることを示している。プロテインキナーゼC(PKC)の活性化もRRPをCa非依存性に正に制御しているが、この作用を抑制するPKC抑制薬でブドウ糖やcAMP作用は全く影響をうけなかった。また、ブドウ糖によるRRP増強作用は蛋白アシル化阻害薬で選択的に抑制されたので、ブドウ糖作用に蛋白アシル化の関与が示唆された。さらに、ブドウ糖やcAMP作用にNADPH依存性に活性化される「細胞質甲状腺ホルモン結合蛋白」の関与があらたに示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブドウ糖によるKATPチャネル非依存性インスリン分泌作用とインクレチンの協調作用の特性を明らかにでき、かつ、今後の分子基盤の探索に繋がる成果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究遂行中に、ブドウ糖によるKATPチャネル非依存性経路の一部に「細胞質甲状腺ホルモン結合蛋白(CTBP)の関与を示唆する予備的な実験結果を得た。CTBPは細胞質に存在しNADPH依存性に甲状腺ホルモンに結合し、その核内への移送を担っている蛋白であるが、我々は、CTBPノックアウトマウスや甲状腺ホルモン受容体βノックアウトマウスで、膵β細胞の機能異常をみいだした。現在、インクレチン作用との関連もふくめ、その詳細を検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で見込んだよりも安価で消耗品が購入できたこと、また、共用の設備を使用できたことで次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成27年度請求額とあわせて、研究の総仕上げの実験や発表に使用する。
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