平成27年度は、in vivoでの膵β細胞におけるKATP非依存性経路に関する2つのモデルで主に実験を遂行した。以前からブドウ糖は膵β細胞内で代謝されNADPHのレベルが上昇することが示されていたが、このNADPH依存性に活性化される「甲状腺ホルモン結合細胞質蛋白(CRYM)」がマウスにおいて糖代謝や脂質代謝に影響をあたえていることをCRYMノックアウトマウスの高脂肪負荷を行うモデルで明らかにした。CRYMノックアウトマウスでは、インスリン抵抗性を変化させることなく、空腹時血糖の上昇と、腹腔内ブドウ糖負荷後の高血糖を認めた。膵ランゲルハンンス島の免疫染色やインスリン分泌実験の結果、膵β細胞のインスリン分泌機構のブドウ糖によるKATP非依存経路の一翼をCRYMが担っている可能性が示唆され、インクレチン作用との相乗作用を確認中である。また、甲状腺受容体βのノックアウトマウスでも低インスリン血症を伴う耐糖能異常が存在することを発見し、さらに詳細に検討を加えた。これら2つの成果は国内の学会に加えて、2015年ボストンで開催されたアメリカ糖尿病学会で一部発表した。現在、追加実験を行いながら投稿準備中である。 一方、膵β細胞に発現することが報告された甘味受容体に関しても、群馬大学生体調節研究所の小島博士らと共同研究をおこない、甘味受容体の選択的アゴニストであるLactisolのインスリン分泌や細胞内カルシウムへの影響を詳細に検討し、論文として発表出来た(J Endocrinol. 2015 Jul;226(1):57-66. doi: 10.1530/JOE-15-0102)。
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