研究課題
今年度は前年度に引き続き、ヒトiPS細胞から軟骨細胞へ分化誘導を行った。今回はエピソーマル・プラスミドを用いて作成された2つの軟骨無形成症患者由来iPS細胞(Ach-iPS細胞(a1、b1))と、同方法を用いて作成された健常者由来iPS細胞を用い比較検討を行った。まず、Ach-iPS細胞(a1)に対し前年度と同様に4段階を経る分化誘導法(Koyama N, Miura M. et al. Stem Cells Dev. 2012. in press.)を行い、ペレットカルチャー開始から、1週間後、2週間後、3週間後でペレットを回収し、それぞれ組織的解析及び軟骨基質(グリコサミノグリカン)の測定、軟骨分化マーカー(2型コラーゲン、アグリカン等)の測定を行い評価した。その結果、継代ごとに軟骨細胞への分化にばらつきを認め、分化が困難である継代数を多数認めた。次に、Ach-iPS細胞(b1)に対し同様に分化誘導を行った。Ach-iPS細胞(a1)と比較すると、比較的に容易に軟骨細胞様に分化が可能であったが、継代数によっては非常に未熟な軟骨細胞を認めた。最後に健常者由来iPS細胞(h428D1)においても、B7クローンと比較すると軟骨基質や軟骨分化マーカーの発現量は乏しかった。今後はより生理的な軟骨細胞を安定して誘導する方法を目指し、現在の方法をさらに改善していく。そして、軟骨無形成症患者の病態がiPS細胞でどのように再現されるのかを把握することを目指していく。
3: やや遅れている
骨無形成症患者由来iPS細胞(Ach-iPS細胞(a1、b1))や健常者由来iPS細胞(h428D1)などのヒトiPS細胞はクローン間だけでなく継代間でも分化能に差が大きい。それぞれの傾向を探るには非常に多くの試行回数を必要とする。現在、特にAch-iPS細胞(a1、b1)については軟骨誘導がまだ安定しておらず、試行回数を増やしているが、明らかな規則性を見出すのには至っていない。
今回、Ach-iPS細胞(a1、b1)のみならず、健常者由来iPS細胞(h428D1)においても、安定した軟骨分化誘導が困難な場面がしばし見受けられた。今後は生理的な軟骨細胞を安定して誘導する方法を確立する為に、最もデータを蓄積しているB7クローンを用いてホルモンや成長因子の添加を行い再検討し、現在の軟骨分化誘導法に反映させ改善を行っていく。また、同時により間葉系前駆細胞への効率的な誘導方法についても引き続き検討を行う。
予定外の助成金を獲得できたため。
維持培養、分化誘導用の培地と、それに添加するホルモンや成長因子をメインに使用する。また、遺伝子発現評価、組織学的評価、表面マーカー解析などに使用する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Nuclear Medicine Communications
巻: 36 ページ: 53-59
10.1097/MNM.0000000000000216
Endocrine Connections
巻: 3 ページ: 173-179
10.1530/EC-14-0086