研究課題
平成26年度は、初年度(平成25年度)に引き続き、中鎖脂肪酸含有食がマウスの血漿グレリン濃度に与える影響を検討し、同時に摂餌量や体重の変化を観察した。肝臓においてactiveなghrelinを過剰産生するマウス(Ghrelin-Tgマウス)の血漿グレリン濃度は、中鎖脂肪酸含有食を与えると、野生型マウスに標準食を与えた場合の約20倍に上昇した(約1000fmol/ml)。当初、我々は循環血中のグレリン濃度が上昇すると、マウスの摂餌量が増加すると予想していたが、Ghrelin-Tgの摂餌量、体重は、野生型マウスと比較して、有意な増加は認めなかった。これは中鎖脂肪酸がグレリン抵抗性を惹起し、そのためにグレリンの摂食促進作用が発揮されなかった可能性が考えられた。そこで、次に我々は、餌全体のカロリーに占める中鎖脂肪酸の含有濃度を、5-40%に変化させた餌を作成し、それらの餌の摂餌下において、マウスにグレリンを投与したところ、中鎖脂肪酸含有食では、どの濃度の餌においても、グレリンによる摂食促進作用が阻害された。視床下部の摂食に関連するペプチドの遺伝子発現を検討したところ、標準食摂食群に比較して、中鎖脂肪酸含有食を摂取している群では、摂食亢進ペプチドであるNPY, AgRPの遺伝子発現が有意に低下していた。一方、摂食抑制ホルモンである、POMCの遺伝子発現は、亢進・減弱ともに認めなかった。現在、他のペプチドの遺伝子発現を検討しているところであり、また中鎖脂肪酸の投与経路を、経静脈的や脳室内投与を検討するための準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
理由:実験計画当初に予定した平成26年度の実験計画を遂行することができ、次年度への準備も整っているため。
平成26年度に引き続き、摂食調節における脂肪酸の意義を検討するために、脂肪酸の鎖長の違いが、摂食関連ペプチドの分泌や作用発現に影響を与えるのか、という点を検討する。そこで、様々な鎖長の脂肪酸を含有する餌や脂肪酸の飽和・不飽和度を変化させた餌を作成し野生型マウスや摂食関連因子の遺伝子改変動物与え、①摂食行動解析 ②エネルギー消費についての解析 ③ホメオスタティックな摂食調節系(視床下部)の解析 ④報酬的摂食行動の解析 ⑤脂肪酸の鎖長の違いや飽和・不飽和度の違いが与える、摂食調節因子投与時の摂食行動への影響の解析 といった検討を行う。
次年度は、3年間の計画の3年目(最終年)であるため。
研究経費の主な用途は、動物実験(餌代、飼育費を含む)にかかる費用、ペプチドおよびそのアンタゴニストなどの試薬費、レプチンやグレリンなどのホルモン測定キットなどの消耗品にかかる費用を予定している。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Endocrine Journal
巻: 61 ページ: 1041-1052
巻: 61 ページ: 735-742
Metabolism
巻: 63 ページ: 469-474
doi: 10.1016/j.metabol.2013.12.011.