研究課題
T-cadherin (Tcad)蛋白は、大動脈・心臓・筋肉・脂肪組織に高発現しており、アディポネクチン蛋白も同様の組織分布を示した。アディポネクチン産生臓器である脂肪組織以外の大動脈・心臓・筋肉において検討を進めた。T-cadherin欠損(Tcad-KO)マウスでは、大動脈・心臓・筋肉においてアディポネクチン蛋白は消失していた。T-cadherin (Tcad)は、GPI-アンカー蛋白の1つであり、GPI-アンカー蛋白切断酵素であるPI-PLCやGPI-PLDによって切断されることが知られている。そこで、PI-PLCを野生型(WT)マウスに投与したところ、血中アディポネクチン濃度は上昇し数時間でピークに達し、48時間後にはベースラインに復した。また、PI-PLC用量依存性に血中アディポネクチン濃度が上昇し、このような現象はT-cadherin欠損(Tcad-KO)マウスでは観察されなかった。さらに、PI-PLCにより大動脈・心臓・筋肉におけるTcad蛋白およびアディポネクチン蛋白の減少を認めた。従って、in vivoにおいてアディポネクチンはTcadを介して組織に集積していることが明らかになった。in vitro血管内皮細胞においても、PI-PLC添加によりTcadが減少し、また細胞に集積するアディポネクチンが減少した。しかしながら、WTマウス由来血清を添加した後にPI-PLCを添加すると、Tcadの減少が見られなくなり、細胞に集積するアディポネクチンも保持されていた。一方、アディポネクチン欠損(Adipo-KO)マウスでは、血中GPI-PLDが上昇しており、血中アディポネクチン補充により上昇していたGPI-PLDは有意に低下した。以上より、アディポネクチンはGPI-PLDを負に制御することでTcad蛋白を正に調節し、組織に集積することが明らかになった。
1: 当初の計画以上に進展している
アディポネクチンの組織集積のメカニズムを明らかにし、組織アディポネクチンの発現調節に対して新たな治療標的分子を同定したから。
GPI-PLDの発現制御は、組織アディポネクチンの集積度を決める重要な一因になることから、GPI-PLDの生理的・病態的意義を明らかにしていく。また、アディポネクチンーTcad経路の破綻が病態に繋がるかをin vivoおよびin vitroで明らかにしていく。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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