研究課題
基盤研究(C)
亜急性甲状腺炎80例無痛性甲状腺炎20例の発症時および4週後の血清中の抗ペンドリン抗体を、ウェスタンブロット法により測定した。また同時に各症例のTSH,FT3,FT4,抗TPO抗体。抗Tg抗体の値を測定した。その結果亜急性甲状腺炎では全例が発症時、4週後ともに抗ペンドリン抗体は陰性であった。各自己抗体も陰性か、軽度の上昇であった。無痛性甲状腺炎では 25%の症例に抗ペンドリン抗体が陽性であった。他の甲状腺自己抗体は軽度から中等度の陽性を示した。発症時、4週後ともに変化は見られなかった。また、各ホルモン値、自己抗体値との相関も見られなかった。抗ペンドリン抗体値は,橋本病、バセドウ病で高率なのと対称的であり炎症性甲状腺疾患と、自己免疫性甲状腺疾患の鑑別に有用であると考えられた。また同時に多数例の測定を可能にするために、ELISA法の開発を目指した。膜タンパクを構造変化をさせないで発現させるためには哺乳類の浮遊細胞を用いた大量培養が必須である。そこでHEC293細胞を用い大量にペンドリンタンパクを得ることに成功した。ELISA法を行うには膜分画から的確にペンドリン蛋白を抽出し、かつ本来の構造を保ち、自己抗体とのを阻害しないデタージェントを選ぶことが最も重要である。各種のデタージェントを用いて検討したところ、CHAPS,Sodium Cholate, NP40, TritoneX100などによりペンドリンは膜タンパクから抽出され、かつ抗体との結合阻害されないことが分かった。今後最も自己抗体との結合能を保ったまま抽出できるデタージェントをさらに検討してゆく予定である。またELISA法を直接法、サンドイッチ法で試みたが、ヒト血清を使用するためバックグランドが高く、また、ペンドリン蛋白発現量は強制発現によっても極めて少ないため、特殊な方法を開発しなければいけないことが分った。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的のうち、1である亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎患者血清の測定におけるPendrin 自己抗体の評価は、完成した。その結果抗ペンドリン自己抗体陽性率は、炎症性甲状腺疾患で低率自己免疫性甲状腺疾患で高率であり、両者の鑑別に、極めて有用なことが示された。また自己抗体が単に細胞の破壊によって血中に暴露されるだけでは産生されないことも示され、自己抗体産生メカニズムの解明の一助となると考えられた。2のELISA法の開発については、1)HEC293浮遊培養により哺乳類の細胞よりペンドリン蛋白を得ることに成功した。2)膜分画よりペンドリン蛋白を的確に抽出し、かつ変性を伴わずペンドリン抗体との結合を妨げないデタージェントをほぼ確立した。3ELISA法確立のための問題点と今後の改善すべき点を明らかにできた。すなはち膜蛋白は強制発現によっても細胞質蛋白に比較し極めて少量しか得られない。デタージェントを用いることにより、直接法、サンドイッチ法のを試みるとき蛋白、抗体がELISAプレートより遊離してしまう。ヒト血清はELISAプレートに対しての非特異的結合が高く、少量の膜蛋白のシグナルを覆い隠してしまう。このためには。ELISAプレートに特殊なブロッキング剤をコートしたものを用いなければいけない。しかしデタージェントはブロッキング剤をコートした市販のELISAプレートに使用すると、このブロッキング剤を変性、遊離させてしまい、non specific bindingが上昇する。これらの問題点を解決するため、現在新たな方法を考案し、現在実験が進行している。ELISA法の確立には至っていないが、確実に成功に向かっている。
膜蛋白を用いたELISA法の確立は極めて困難であり、これまでに何篇かの論文がウエスタン法では測定できた抗ペンドリン抗体が、ELISA法では測定できなかったと述べている。これは上記の問題点を解決するに至っていないからである。今後は通常のELISA法ではなく、リポゾームの膜に植え込んだペンドリン蛋白を用いてのELISA法。非特異的結合をなくすために新たな方法を開発する。ELISA法ではなく、免疫沈降を用いて測定する方法に変更する。そのために、測定に必要な、ペンドリンの放射線ラベルを行ったり他の方法で測定可能な蛋白をTagとして結合させる。などを検討ており、一部はすでに行っている。いずれも実現可能な方法であり、今年度中に測定系を完成させる予定である。
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