研究課題/領域番号 |
25461390
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
宮田 篤郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60183969)
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研究分担者 |
井上 和彦 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30363641)
神戸 悠輝 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60549913)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生理活性ペプチド / 視床下部 / 神経内分泌 / 下垂体 |
研究概要 |
下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)は視床下部に圧倒的に高濃度存在するが、末梢組織にも広く分布し、内分泌系、神経系等において多様な生理活性を示す多機能神経ペプチドである。従って、その多機能性ゆえに、神経伝達物質或は神経栄養因子としての機能が注目され、その方面の研究が先行し、視床下部における真の生理的機能の解明が遅れている。PACAPは脳室内投与により食欲を抑制するなど、摂食調節やエネルギーバランスの維持において生理的意義を持つと考えられている。 そこで、PACAPの分布密度は高いが機能解明がほとんどなされていない腹内側核(VMH)にフォーカスを絞り、部位特異的ノックアウト動物或は部位特異的過剰発現動物を作成し、その表現系を解析しPACAPの部位特異的機能を明らかにする。さらにPACAP遺伝子発現調節を指標として、レプチンなど他の生理活性物質との機能的連関について明らかにすることにより、PACAPの視床下部因子としての機能を再評価することを目的とする。 当該年度においては、まずPACAPの特異的受容体であるPAC1の機能発現制御にフォーカスを絞り、その解明に取り組んだ。tunicamycin処理による小胞体ストレス暴露下において、Neuro2a細胞の生存活性が低下するとともに、PAC1の遺伝子、蛋白の発現減少を認めた。ルシフェラーゼレポーターアッセイにより、PAC1の遺伝子上流の-282/-252bpに存在する2つのSp1サイトが、発現抑制に関与することが示唆されるとともに、Sp1の蛋白量の減少を認めた。小胞体ストレスにより誘導されるトランスグルタミナーゼ2 がSp1の架橋化を促進することによるSp1を不活性化することがPAC1発現抑制メカニズムに密接に関連することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度において視床下部腹内側核(VMN)特異的にPACAPノックアウトマウス及びPACAP過剰発現マウスを作成する予定で実験を進めて来たが、前年からのプロジェクトであるPACAP特異的受容体PAC1の発現調節の全容解明が長引いた事から、両方のモデルマウス作成に用いるVMN特異的に発現する遺伝子であるsteroidgenic factor 1 (SF1)のプロモーター領域のPCRクローニングに手間取り、マウスの確立までに至っていない。そのため、次年度に向けて少しでも研究課題の解明をスピードアップするため、大阪大学の橋本教授よりPACAPノックアウトマウスの提供を受け、摂食行動の解析を先に進めている。本モデルでは視床下部だけでなく広範囲にPACAPの発現が見られないが、VMN特異的ノックアウトマウスと比較解析する必要があることから、本研究を遂行する上で十分に意義があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在PCRクローニングしたsteroidgenic factor 1 (SF1)のプロモーター領域の塩基配列の確認が終わり次第、ターゲッティングベクタ-及び発現ベクタ-の構築に取りかかる。或はすでにベクタ-を有している研究者に直接コンタクトして、分与してもらうことも同時並行して考慮する。大阪大学の橋本教授より提供されたPACAPノックアウトマウスにおいて、本年度実施予定であるモデルマウスの1連の解析を行う。即ち、摂食行動、他の摂食調節因子(オレキシン、CRH、レプチン、メラニン凝集ホルモン(MCH),NPYなど)との関連性を検討する。またPAC1特異的アゴニストであるマキサディラン及び特異的アンタゴニストMD4を脳室内投与するなどして同様の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた遺伝子改変マウスの作成にまで至らなかったことから、実験動物関連の当初計画した支出に届かなかった。 次年度には予定通り動物実験が行われることから、繰り越し分の経費を充てる予定である
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