研究概要 |
肥満者を効果的に減量させるためには適正なエネルギー量の食事療法が最も重要であるが、その継続は困難な場合が多い。理由の一つは、高次脳機能中枢が司る情動、記憶、ストレスといった「人間らしさ」と食欲とが非常に密接に関連しているからである(Neuroimage 19:1381-94,2003) (Nat Neurosci 9:381-8,2006) (Am J Clin Nutrr 83:1297-305,2006)。 本研究では、肥満モデルC57BL/6J雄マウスにおいて、若齢期の一定期間(4~7週齢)高脂肪食を給餌することによって、通常食給餌群と比較して、成獣期の海馬における小胞体(ER)ストレス関連蛋白および遺伝子(CHOP, XBP1,そしてERdj4)発現の亢進傾向が認められ、さらに4PBA (4フェニル酪酸)を供投与することで、高脂肪食給餌群は、その発現が通常食給餌群のレベルまで回復した。 通常食給餌群と高脂肪食給餌群の両群の海馬領域近辺では、glia細胞の集積に明らかな差は認められなかった。しかしtrimethyltin (TMT)で強制負荷を施したした各群マウスで比較すると、海馬領域のBrdU染色にて、若齢期高脂肪食給餌群は通常食給餌群と比較して、有意に生細胞数の減少が認められた。 海馬領域のprimary neuronal cultureを使用した実験では、パルミチン酸(palmitate)の添加がERストレスの発現を有意に亢進させ、逆に神経突起成長速度の減弱傾向が認められた。さらに4PBAを前投与した群は、その後palmitateを投与しても、ERストレスの発現が抑制され、palmitate単独投与群と比較して、神経突起成長速度の回復傾向が認められた。
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