これまでの研究で、若齢期における人工甘味料摂取が、視床下部小胞体(ER)ストレスを介して、成獣期の肥満感受性を高める可能性が示唆された。次に、若齢期の一定期間(4~7週齢)高脂肪食を給餌した群は、通常食給餌群と比較して、成獣期の海馬におけるERストレス関連蛋白および遺伝子(CHOP、XBP1、そしてERdj4)発現の亢進傾向が認められ、さらに4PBA (4フェニル酪酸)を供投与することで、高脂肪食給餌群は、その発現が通常食給餌群のレベルまで回復した。同様の検証を甘味料アスパルテームを若齢期に投与して検証したが、明確な差は認められなかった。一方、扁桃体においての検証では、ERストレスの明らかな発現そのものが見出せなかった。通常食給餌群と高脂肪食給餌群で、海馬領域近辺では、グリア(glia)細胞の集積(グリオーシス)に明らかな差は認められなかったが、しかしtrimethyltin (TMT)処理を施し、各群成獣マウスで比較すると、海馬領域のBrdU染色にて、若齢期高脂肪食給餌群は通常食給餌群と比較して、有意に生細胞数の減少が認められた。 海馬領域のprimary neuronal cultureを使用した実験では、パルミチン酸(palmitate)の添加がERストレスの発現を有意に亢進させ、神経突起成長速度の減弱傾向が認められた。さらに4PBAを前投与した群は、その後palmitateを投与しても、ERストレスの発現が抑制され、palmitate単独投与群と比較して、神経突起成長速度の回復傾向が認められた。 海馬及び扁桃体領域において、グルタミン酸系興奮性入力回路およびGABA系抑制性入力回路の変容の可能性を免疫組織学手法を中心に検証したが、若齢期高脂肪食や甘味料給餌群は、通常食給餌群と比較して、成獣期での明確な差は認められなかった。
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