近年、糖尿病・脂質異常症・高血圧や肥満といった生活習慣病患者数が増加の一途をたどっていることから、そのメカニズムの解明、より有効な治療法の確立が世界的にも急務となっている。その中でも消化管はホルモンを分泌する内分泌器官としても注目を受けている。現在、消化管ホルモンであるインクレチンは、GLP-1アナログやGLP-1分解酵素であるDPP-IVの阻害薬など新しい糖尿病治療薬として臨床の場で大きな成功を収め注目されており、膵β細胞の保護・増加作用についても期待されている。 我々は以前より消化管に注目し独自の新規消化管ホルモンとしてBetagenin = IBCAPを同定し解析を行ってきた。これまでにBetageninが膵β細胞の増殖刺激作用を持つこと、また、Tg/KOマウスの解析からBetageninが膵ラ氏島の量を決める重要な因子であることを明らかにしており、糖尿病に対する根源的治療薬となる可能性が期待される。 Betageninは蛋白に翻訳後、切断されて作用することが予想されたため、今回、新たにアミノ酸1次構造を解析し、合成ペプチドを作成して検討を行った。その結果、Betagenin合成ペプチドがin vitroにおいて膵β細胞増殖促進作用を持つことが確認され、さらにSTZ投与1型糖尿病モデルマウスに投与したところ、糖尿病が改善し膵β細胞の増加を誘導した。 以上より、Betageninは膵β細胞増加作用を持ち、糖尿病に対する根源的治療薬となる可能性が示唆された。今後の検討により、膵ラ氏島、膵β細胞の移植や再生医療も含め、糖尿病、特に1型糖尿病の治療への応用が期待される。
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