研究課題/領域番号 |
25461400
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
森 美和 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 特任研究員 (50363148)
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研究分担者 |
森 健二 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (00416223)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内分泌 / 生理活性ペプチド / 受容体 |
研究概要 |
研究代表者の所属する研究室では、生理活性ペプチドの活性を検出するアッセイ法を新たに開発・導入することによって、数多くの新規生理活性ペプチドを継続的に発見してきた。具体的には、1980年代前半の平滑筋の弛緩・収縮アッセイの開発によりナトリウム利尿ペプチドファミリー(ANP、BNP、CNP)と6種類のニューロメジンを、1990年代のcAMPのラジオイムノアッセイの導入によりアドレノメデュリンを、1990年代後半から2000年代にかけてのオーファンGタンパク質共役型受容体(GPCR)の内因性リガンド探索によりグレリンとニューロメジンSを発見してきた。これらの事実から、新しい活性測定法の導入が新規生理活性ペプチド発見の契機となっていることがうかがえる。一方で、ペプチドそのものの活性を指標とした新規生理活性ペプチドの発見は、国際的にも2005年のニューロメジンSの発見が最後であるため、現在では新しい活性測定法が求められている。近年、エンドセリンB受容体やアンジオテンシン1型受容体が三量体Gタンパク質G12/13に共役することが報告されている。しかしながら、G12/13シグナル伝達系の活性化の検出にはウエスタンブロット法をはじめとする煩雑な作業を要するため、このシグナル伝達系に着目したペプチド探索はこれまで困難であった。 そこで、G12/13シグナル伝達系の活性化により、血清応答因子応答配列(SRF-RE)が特異的に活性化されることを応用し、この配列をプロモーター領域に導入したレポーター遺伝子を用いて簡便かつ高感度なG12/13シグナル伝達系のハイスループット活性測定法を新たに開発した。また、この活性測定系をオーファン受容体の内因性リガンド探索に適用しており、現在では脳など中枢神経系でのアゴニスト活性の検出を試みている。また、この実験過程である種のオーファン受容体がG12/13シグナル伝達系を恒常的に活性化していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エンドセリンB受容体cDNAと血清応答因子応答配列(SRF-RE)をプロモーター領域に挿入したレポーター遺伝子をHEK293細胞へ導入し、エンドセリンを反応させた。この結果、エンドセリンの濃度依存的なレポーター遺伝子の発現が観察され、エンドセリンB受容体がG12/13シグナル伝達系を活性化していることが示された。また、その最低検出感度は0.1nMであるため、ペプチド探索に必要なアッセイ感度を十分に満たしていた。現在では、このアッセイ系を用いてオーファン受容体の内因性リガンド探索を試みている。特に、脳と脊髄から抽出したペプチド分画をアッセイに供して特異的なアゴニスト活性の探索を試みている。 一方で、特定のオーファン受容体(仮名GPRX)とSRF-REレポーター遺伝子をHEK293細胞に導入したところ、リガンド刺激に非依存的なレポーター遺伝子の強い発現が観察された。これは、GPRXが恒常的にG12/13シグナル伝達系を活性化する基礎活性を持っていることを示している。この結果は、内因性リガンド探索を推進するにあたり、アゴニスト活性に加えてインバースアゴニスト活性も観察しなければならないことを示唆する興味深い現象であった。 以上により、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、G12/13シグナル伝達系に着目したオーファン受容体の内因性リガンド探索により、新規生理活性ペプチドの発見を目指す。また、SRF-REレポーター遺伝子をヒト肝癌細胞HepG2やマウス線維芽細胞3T3L1に導入して、内因性受容体の活性化をモニターすることにより、ペプチド由来のアゴニスト活性の検出を試みる。これまでは、アッセイに供する組織として中枢神経系に着目していたが、今後は消化管などの末梢組織についても研究対象とする。 一方、オーファン受容体であるGPRXの内因性リガンドがインバースアゴニストである可能性を示す知見を得た。SRF-REレポーター遺伝子をアッセイに用いる場合、半減期の長いレポータータンパク質の蓄積を観察しているため、その産生抑制を観察しなければならないインバースアゴニスト活性の評価は困難である。このため、G12/13シグナル伝達系のインバースアゴニスト活性を評価することができる新たなアッセイ系の開発を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費は、主に旅費及び謝金として計画していたものである。しかし、研究の進捗状況からこれらは使用する必要がなかった。 翌年度は物品費として使用する予定である。本研究計画では、国立循環器病研究センターの保有する共同研究機器ならびに、国立循環器病研究センター研究所生化学部の機器を中心に使用するため、研究を遂行するための物品費(消耗品)を中心として研究費の使用を計画している。
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