研究代表者の所属する研究室では、生理活性ペプチドの活性測定法を新たに開発・導入することによって、数多くの新規生理活性ペプチドを発見してきた。例えば、平滑筋の弛緩・収縮アッセイの開発によりナトリウム利尿ペプチドファミリーと6種類のニューロメジン類を、cAMPのラジオイムノアッセイの導入によりアドレノメデュリンを、オーファンGタンパク質共役型受容体(GPCR)の内因性リガンド探索によりグレリンとニューロメジンSを発見した。これらの結果により、新しい活性測定法を導入することで、新規生理活性ペプチドが発見される可能性が高まると期待できる。その一方で、ペプチドそのものの活性を指標とした新規生理活性ペプチドの発見は、国際的にも2005年のニューロメジンSの発見が最後であるため、現在では新しい活性測定法の導入が求められている。近年、エンドセリンB受容体などが三量体Gタンパク質G12/13に共役することが報告されているが、G12/13シグナル伝達系の活性化の検出には煩雑な作業を要するため、このシグナル伝達系に着目したペプチド探索はこれまで困難であった。 そこで、G12/13シグナル伝達系の活性化により、血清応答因子応答配列が特異的に活性化されることを応用し、この配列をプロモーター領域に導入したレポーター遺伝子を用いて簡便かつ高感度なG12/13シグナル伝達系のハイスループット活性測定法を新たに開発した。また、この実験過程で、あるオーファンGPCRがG12/13シグナル伝達系を恒常的に活性化していることを見出し、アゴニストだけでなくインバースアゴニストもオーファンGPCRの内因性リガンドとして機能しうる可能性を示した。さらに、新たに2種類のオーファンGPCRについて遺伝子発現分布を解析し、高発現組織をターゲットとして、従来法と本研究にて開発した活性測定法を駆使して内因性リガンドを探索した。
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