研究課題/領域番号 |
25461402
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
佐々木 一樹 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80260313)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ペプチドミクス / 質量分析 / 生理活性ペプチド |
研究概要 |
VGFは、内分泌細胞および神経細胞に発現する約600アミノ酸から成る分泌性タンパク質である。近年、我々は質量分析法を活用して、VGFからNeuroendocrine Regulatory Peptides (NERPs)と命名した新しい4種類の生理活性ペプチドを同定している。これらのペプチドは水電解質・エネルギー代謝に関わっていることを明らかにした。本タンパク質は、生理活性ペプチドの前駆体としては、既知の分子に比較して分子量が大きいことが特徴的である。VGF前駆体のプロセシングおよび翻訳後修飾は、既存の生理活性ペプチド前駆体には見られないほどに複雑であることを申請者は明らかにしつつある。 本研究ではVGF由来ペプチドの生理的役割の全容の解明の第一段階として、質量分析法を駆使してそのプロセシングと翻訳後修飾の実態をより詳細に解析し、未同定のVGF由来活性ペプチドを探索している。探索法としては、一般的なプロテオーム解析の手法とは異なり、細胞の分泌するペプチドをそのままの分子型で配列を同定している。網羅性を高めるために、本研究では理論段数が6ケタに及ぶ高分離能をもつ分析カラムを用い、質量精度と分解能についても市販機種で最高性能の質量分析計を用いることで、従来のペプチド分析では不可能であった網羅性の高い分析を可能とした。このような分析で一回当たり4桁近くに及ぶペプチドの同定が可能となり、内在型ペプチドの同定に関しては、世界最高水準に達することができた。 VGF関連ペプチドを同定するための分析対象としては、ヒト膵、肺、甲状腺由来の内分泌腫瘍細胞株、マウス由来の胃の内分泌細胞不死化株、ラットの下垂体抽出物を用いて解析を継続している。現在までにVGF前駆体から由来し、いくつかの翻訳後修飾を受けた分泌ペプチドを同定しており、その解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度での研究計画では、ヒト由来内分泌細胞が分泌するペプチドとラット下垂体に存在するペプチドの解析を重点的に行う予定であり、これに関しては順調に進んでいる。また、マウス由来の胃内分泌細胞不死化株についてもその分泌ペプチドの解析を開始している。配列決定法として、従来の衝突誘起解離法(CID)に加えて、電子転移解離法(ETD)を用いることで前者では明らかにできないペプチドの同定を進めており、VGF前駆体由来ペプチドばかりではなく、他の新規のペプチドも同定され始めている。生理活性ペプチドは配列内部に塩基性アミノ酸を含むことが多く、ETD法がそのような目的に合致することを我々は昨年、プロテオミクス研究の国際誌に発表している。 VGF[554-577]-NH2機能解析については、抗菌活性以外の作用を見出しており、研究を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
ペプチド同定の網羅性をさらに高めるための周辺の分析技術の最適化をすすめるともに、質量分析で見いだされた候補ペプチドの機能解析を進める予定である。新たに見いだされたVGF 由来の新規ペプチド VGF[554-577]-NH2 について標的臓器・器官の同定をすすめて、受容体同定のための基盤情報を収集する。下垂体については、葉により産生ホルモンおよびホルモン前駆体のプロセシングが大きく異なっている事が知られているために、前葉、中葉および後葉に区分して解析を進める計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
特注の消耗品が含まれており、価格の確定に時間を要したため。 次年度の消耗品代として充当する。
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