研究課題
本研究では骨髄腫の臨床検体と細胞株に対して、薬剤排出機能が亢進し、かつ、がん幹細胞が多く含まれるとされるside population(SP)分画と非SP分画からRNAを抽出して、網羅的なmiRNA発現解析を行うことによりSP細胞で異常発現するmiRNAを同定し、治療標的となりえるmiRNAの同定を目指した。臨床検体20検体と骨髄腫14細胞株のSPと非SP細胞を純化し網羅的なmiRNA/遺伝子発現解析を行い、SPと非SP(以下MP)での発現比較を行った。骨髄腫臨床検体では、CD138で標識した細胞からSP細胞を純化し、RNAを抽出し、遺伝子網羅的発現解析を行った。その際の遺伝子発現の比較はCD138陽性のSPとMP細胞分画である。骨髄腫細胞株の実験SPとMPは、明らかに性質が異なることからmiRNAおよび遺伝子発現差があると考えられた。4骨髄腫細胞株からSP細胞を抽出しMP細胞との間で30 miRNAにつき発現量を比較したところ、miRNA-181でSPとMP間の発現差を見いだした。また、標的となりうるmiR-181を設計しtetracycline off systemにより発現調整ができるvectorを細胞株に導入した。そしてNOGマウス(NOD/Shi-scid, IL-2Rγnul mouse)に、標的遺伝子のmiRNAレトロまたはレンチウィルスベクターを組み込んだ腫瘍細胞株または臨床検体細胞を経皮下的に移植して腫瘍を発症させた後、tetracycline(5g/l)水を同マウスに投与してmiR-181を発現させ、SP細胞への腫瘍抑制効果を検討し、miR-181強制発現による腫瘍退縮効果を認めた。また、MGUS, 無症候性骨髄腫、症候性骨髄腫、そして、再発難治性骨髄腫といった病態の進行に伴ってmiR-181のSPにおける発現変化が経時的に発現が低下することを見出した。現在、成果をまとめている。
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日本臨牀
巻: 73 ページ: 455-460
血液内科
巻: 70 ページ: 661-667