研究課題/領域番号 |
25461407
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坂田 麻実子 (柳元 麻実子) 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80451805)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | TET2 / T細胞リンパ腫 / RHOA |
研究概要 |
[背景] 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)は濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)を起源とする造血器腫瘍である。近年、AITLにおいては、エピゲノム調節因子であるTET2遺伝子に機能欠損型変異が高頻度に認められることが報告された。これまでの我々の検討において、TET2遺伝子欠損マウスではヒトに類似したリンパ腫を発症することを見いだした。 [目的] TET2遺伝子変異によるエピゲノム異常に遺伝子異常が段階的に集積することによる濾胞性ヘルパーT細胞の腫瘍化メカニズムを明らかにするために研究を行った。 [方法] ヒトAITLおよびAITL関連リンパ腫におけるゲノム解析を行った。さらには、TET2欠損マウスに発生したT細胞リンパ腫についてゲノム解析を行い、これをヒトのリンパ腫におけるゲノム解析の結果と比較した。 [結果] ヒトAITL およびAITL関連リンパ腫の60-70%の症例でRHOA遺伝子変異を認めた。またRHOA遺伝子変異を認める症例ではTET2変異が共在していた。一方TET2欠損マウスに発生したリンパ腫では、現在までの解析では、RHOA遺伝子変異は認められなかった。 [考察] RHOA遺伝子変異とTET2遺伝子変異の共在はヒトAITLの発症にとって極めて重要なメカニズムであると考えられる。一方で、マウスではRHOA遺伝子変異以外の要因が関わっている可能性がある。今後ゲノム解析をすすめ、腫瘍化メカニズムを明らかにする必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究において、T細胞リンパ腫に特異的な遺伝子変異プロファイルを明らかにした。これは、T細胞リンパ腫の病態解明にとって極めて重要な研究である。またトランスレーションという観点からも、本疾患の診断、治療方法の開発に進展していく可能性がある。本研究成果に関連して、国内、国外含め14件の学術集会で発表を行うとともに、本研究成果およびこれから発展して得られた研究成果を元に特許を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトで見いだされたT細胞リンパ腫特異的なRHOA遺伝子変異とTET2遺伝変異の共在は、腫瘍を引き起こす最も直接的な原因と考えられる。今後は、TET2欠損に加えてRHOA変異体を発現するマウスを作製することでよりヒトの腫瘍に近い腫瘍モデルを作製する。これについて、下流のエピゲノムシグナルおよび転写因子ネットワーク調節を明らかにすることで腫瘍発症のメカニズムを明らかにする。
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