研究課題
基盤研究(C)
近年、造血幹細胞を含む複数の組織幹細胞において、個体レベルでのカロリー摂取量がその動態に大きな影響を及ぼすことが判明し、新たな幹細胞制御機構として注目されている。本研究課題では造血幹細胞をモデル系として、カロリー摂取制限がいかに幹細胞の自己複製や分化に影響を与えるのか、またそれが幹細胞に直接作用しているのか或いはニッチ細胞を介しているのかを明らかにし、その分子機構の解明を目的としている。平成25年度はカロリー制限の造血幹細胞に及ぼす影響を調べるために、野生型マウス造血幹細胞における絶食の影響を解析した。その結果フローサイトメーターによる細胞表面マーカーの表現型解析においては、絶食を受けたマウスにおいて造血幹細胞画分の増加が認められた。また骨髄細胞移植による造血幹細胞の機能解析においても、造血幹細胞の増加傾向が観察された。さらに、X線照射によるダメージの影響を調べた結果、これに関しては絶食の効果による優位性は見られなかった。これらの結果より、カロリー制限の造血幹細胞に直接及ぼす影響と分子機構を調べるために、AMPKα1α2欠損造血幹細胞の維持・増殖・分化におけるカロリー摂取制限の影響について解析を行なった。方法としては、AMPKα1α2コンディショナルノックアウトマウスを準備し、これらのマウス骨髄細胞を致死量の放射線照射処置を行なった野生型マウスに対して野生型骨髄細胞とともに競合的に移植を行なった。造血が安定したところで絶食を行ない、血液のキメリズムのモニターを行なった。その結果、食餌制限無しのコントロールと比較して優位な差は観察されなかった。
2: おおむね順調に進展している
AMPK以外の遺伝子に関する解析が進められなかったものの、野生型造血幹細胞におけるDNAダメージによる影響の解析を先行して行なったため、総じて順調に進んでいるため。
AMPK以外の遺伝子欠損マウスの準備を進め、当初の実験計画通りに環境側の解析も行なう予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻: 111 ページ: 3805-3810
10.1073/pnas.1320265111
The American Journal of Pathology
巻: 183 ページ: 592-603
10.1016/j.ajpath.2013.04.018.
The Journal of Biochemistry
巻: 155 ページ: 227-233
10.1093/jb/mvt112. Epub 2013 Dec 23.