研究課題
組織幹細胞は、幹細胞ニッチと呼ばれる微小環境から、増殖・生存・分化などの調節を受け、未分化性を維持している。近年、複数の組織幹細胞において、個体レベルでのカロリー摂取量がその動態に大きな影響を及ぼすことが判明し、新たな幹細胞制御機構として注目されている。しかしながら、生体内における機能解析が不十分であること、造血幹細胞システムなど他の幹細胞システムについても共通原理として同様のメカニズムが存在するかどうかは不明である。本研究課題では造血幹細胞をモデル系として、カロリー摂取制限がいかに幹細胞の自己複製や分化に影響を与えるのか、またそれが幹細胞に直接作用しているのか或いはニッチ細胞を介しているのかを明らかにし、その分子機構の解明を目的としている。最近、絶食を繰り返したマウスの造血幹細胞はケモセラピー(化学療法)に対して耐性を示すことが報告された(Cell Stem Cell, 2014, 14, 810-823)。前年度はX線照射によるダメージの影響を調べたが、平成26年度は上記の報告を検証するために、野生型マウス造血幹細胞を用いて絶食を繰り返したマウス造血幹細胞におけるケモセラピーに対する効果について解析を行なった。方法としては、野生型マウスを2日間絶食させた後シクロホスファミドを投与し12日間通常食餌を採る、という処置を1サイクルとして2から6サイクルを行なった。これらのマウス骨髄細胞を採取し、FACS解析および致死量の放射線照射処置を行なった野生型マウスに対して野生型骨髄細胞とともに競合的に移植を行なった。その結果、食餌制限無しのコントロールと比較して絶食を繰り返したマウスの造血幹細胞ではシクロホスファミド投与に対する耐性について優位な差は観察されなかった。また平成26年度はFoxO3afloxマウスを用いた解析の準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
今年度は海外の研究グループからカロリー制限と造血幹細胞のストレス耐性についてレポートが報告されたので、この結果を検証するために、野生型造血幹細胞における化学療法ストレスに対する影響の解析を先行して行なったため、総じて順調に進んでいるため。
FoxO3a欠損マウスの準備を進め、オートファジー等の解析も行なう予定である。
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Journal of Neuro-Oncology
巻: 121 ページ: 239-250
10.1007/s11060-014-1630-z
Biochemical and Biophysical Research Communications
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10.1016/j.bbrc.2014.06.066
http://cri-mol-gen.w3.kanazawa-u.ac.jp/