研究課題
WHO分類2008年版における骨髄増殖性腫瘍の一つである「好酸球増加とPDGFRA、PDGFRBまたはFGFR1遺伝子の異常をともなう骨髄系とリンパ系腫瘍」ではPDGFRAと融合する遺伝子はこれまで6種類が報告されているが、我々が経験した症例の分子生物学的な検討により第7番目遺伝子FOXP1を同定した (論文投稿中)。FOXP1- PDGFRAの融合遺伝子のmRNAの塩基配列とゲノムDNAの塩基配列を解析したところ、FOXP1遺伝子のイントロン23aの部分が本来転写されるべきコドン鎖ではなく、アンチコドン鎖が逆方向に翻訳されていた。FOXP1遺伝子のイントロン23aの部分に3カ所の繰り返される相補的塩基配列の組み合わせがあり、そのことによりヘアピン構造を形成していた可能性があり、このようなことが遺伝子の不安定性を招き、融合遺伝子の形成すなわち疾患の発症の原因となったことが示唆される。以上の結果は好酸球増加をともなう骨髄増殖性腫瘍だけでなく、融合遺伝子が原因である疾患の発症メカニズムの解明に有用な情報を与えるものである。骨髄増殖性腫瘍の一つである本態性血小板血症におけるJAK2、CALR、MPL遺伝子の遺伝子変異を66例で検討し、JAK2の遺伝子変異を24例で、CALRの遺伝子変異を30例で、MPLの遺伝子変異を2例で検出し、それらの遺伝子変異は同一症例では観察されず、また、いずれの遺伝子の遺伝子変異も認めなかった症例が10例であった (第76回日本血液学会で発表)。造血幹細胞の研究を継続しておこなっているが、肝硬変患者の末梢血中の造血幹/前駆細胞のマーカーであるCD34を指標に、造血幹/前駆細胞を定量すると、脾摘は生体の造血幹/前駆細胞の分布を変化させ、末梢血中の造血幹/前駆細胞を増加させることを明らかにした。
3: やや遅れている
骨髄増殖性腫瘍のリンパ球造血についての検討が十分には進行していない状況である。しかしながら、骨髄増殖性腫瘍の一つである「好酸球増加とPDGFRA、PDGFRBまたはFGFR1遺伝子の異常をともなう骨髄系とリンパ系腫瘍」においてPDGFRAと融合する第7番目遺伝子FOXP1を同定し、FOXP1- PDGFRAの融合遺伝子の遺伝子配列を解析し、融合遺伝子が形成されるメカニズムの手掛かりとなるデータを得ることができた。これらの成果は骨髄増殖性腫瘍の病態解明に有用な情報を与えるものである。骨髄増殖性腫瘍のリンパ球造血についての研究を遂行するための、臨床検体の保存は継続して行っている。また、リンパ球の分化を詳細に検討するための、多種類の分化マーカーを同時に解析できるシステムを構築中である。さらに、これまで以上に造血幹細胞分画、前駆細胞分画を効率的に分離するための技術面での改良にも取り組んでいる。単一細胞レベルでの遺伝子発現の解析を予定しているが、そのための機器が昨年度に学内に設置され、使用のための講習会を終えている。このような状況から、研究計画の遂行がやや遅れていると判断した。
慢性骨髄性白血病、真性赤血球増加症、原発性骨髄線維症、本態性血小板血症だけでなく「好酸球増加とPDGFRA、PDGFRBまたはFGFR1遺伝子の異常をともなう骨髄系とリンパ系腫瘍」も含めて、広く骨髄増殖性腫瘍のリンパ球造血についての解析を推し進めていく。継続して行っているストローマ細胞を用いたヒト造血幹細胞からのT細胞とB細胞への分化の制御メカニズムの解明を引き続き遂行し、得られた知見を研究の推進に活用していく。本態性血小板血症を中心に骨髄増殖性腫瘍におけるJAK2遺伝子変異、CALR遺伝子変異、MPL遺伝子変異を含めた遺伝子変異の解析も継続して遂行し、得られた結果を本研究課題の研究成果の質の向上にも繋げていくように努める。
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