研究課題/領域番号 |
25461417
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
織谷 健司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70324762)
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研究分担者 |
金倉 譲 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20177489)
齊藤 則充 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30597399)
一井 倫子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (30633010)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内科 / 造血器疾患 / STAP-2 / シグナル伝達 |
研究概要 |
Signal transducing adaptor protein-2 (STAP-2)は、種々の転写因子やシグナル伝達分子との結合を介して増殖・生死および細胞機能を制御する可能性をin vitro実験系で報告してきた。今回、STAP-2欠損マウスを用いて生体反応におけるSTAP-2の役割を解析した。STAP-2欠損マウスではIgEを介するアナフィラキシーショック反応(ヒスタミン放出や血管透過性亢進など)が野生型マウスと比較して著明に亢進していることを示すことで、STAP-2が生体内でIgE誘導アレルギーを抑制することを明らかにした。また、DSS経口摂取にて炎症性腸炎を誘導する実験系において、STAP-2欠損マウスでは野生型マウスと比較して腸炎症状が軽微であることも示した。以上、STAP-2発現を調節することで生体内で起こるアレルギー反応や炎症反応などを制御できることを明らかにできた。 STAP-2蛋白の立体構造解析を行う準備を進めた。STAP-2 cDNA全長をpFastBacIベクターに組み込んだ。この場合、産生されるSTAP-2蛋白は、N端にGST-tagと3C protease切断部位を、C端に6X His-tagを有している。STAP-2蛋白を昆虫細胞に葉圧減させた後に、Niアフィニティー精製・GST-tag除去および陽イオン交換精製を行い、さらにゲルろ過クロマトグラフィーにて純度を高めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STAP-2の生体内役割を明らかにすることができた。また、STAP-2蛋白の大量作製・精製に成功した。しかし、造血幹細胞へのBCR-ABL遺伝子導入に関して難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
A. BCR-ABL関連造血器腫瘍におけるSTAP-2の役割解析:STAP-2欠損マウスおよび野生型マウスから造血幹細胞(HSC)分画(Lineage- Sca-1+ c-kit+)を採取して、BCR-ABL発現ウイルスベクター(GFP産生あり)を導入する。GFP陽性細胞をFACSAriaにて回収し、BCR-ABL依存性腫瘍化に及ぼすSWTAP-2の作用を解析する。 B. STAP-2分子あるいはSTAP-2/BCR-ABL結合蛋白の構造決定:機能的なSTAPは、昆虫細胞もしくは哺乳類培養細胞組み換え発現系により大量に調製する。CD,NMRおよび動的光散乱法により精製標品の性質を評価し、適切なものが得られれば結晶化試行を行う。位相決定を行うために、メチオニン中の硫黄原子をセレン原子に置換したセレノメチオニンを目的蛋白に導入し、単波長異常分散法 (SAD法)を適用する。 C. STAP-2/BCR-ABL相互作用に対する阻害剤の開発:STAP-2あるいはSTAP-2/BCR-ABL結合蛋白の立体構造情報に基づいたin silico解析を行い、STAP-2/BCR-ABL機能を阻害する候補化合物を決定する。各候補化合物のスクリーニングは、慢性骨髄性白血病細胞株K562の培養系に各化合物を添加して細胞増殖抑制あるいはケモカイン受容体発現変化にて評価する(K562細胞培養にImatinibを添加すると細胞増殖が抑制される。K562細胞のSTAP-2発現をノックダウンするとCCR7の発現が低下する。)。また、STAP-2/BCR-ABL結合蛋白を発現させたBa/F3細胞株でも同様の検討を行う。最終的には、BCR-ABL/STAP-2結合およびBCR-ABLの自己リン酸化に及ぼす影響を確認する。選択した化合物と類似の構造を持つ低分子化合物について同様の検討を行い、最適な化合物を決定する。
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