研究課題/領域番号 |
25461417
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
織谷 健司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70324762)
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研究分担者 |
金倉 譲 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20177489)
齊藤 則充 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (30597399) [辞退]
一井 倫子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (30633010)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 炎症 / アレルギー / STAP-2 / アダプター蛋白 |
研究実績の概要 |
Signal-transducing adaptor protein-2 (STAP-2)の生体内役割を明らかにするとともに、STAP-2の量的異常が疾患発症や病態にどのように関与するかを解析した。 デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)経口摂取により慢性炎症性腸炎(クローン病や潰瘍性大腸炎)様の消化管病変が惹起される。STAP-2欠損マウスでは、DSSにより惹起される体重減少や下痢・下血などの腸炎症状および消化管組織変化が減弱していた。消化管病変部への炎症細胞侵潤が軽微であったことから、その原因を解析したところ、STAP-2欠損マウスでは、DSS摂取による腸管上皮細胞からのケモカイン分泌が低下していることやマクロファージのケモカイン遊走能が低下していることなどが判明した。このことから、生体内において、STAP-2は炎症反応を増強する役割があると考えられた。これら結果を、Eur J Immunolに報告した。 STAP-2は、肥満細胞に発現が認められ、Fc-epsilon-RIからのシグナルを減弱させた。抗DNP-IgE抗体で感作した後にDNP-BSAで刺激したときに認められるアナフィラキシー反応(体温低下や血管外体液漏出)は、STAP-2欠損マウスで著明に亢進していた。その一因として、STAP-2がFc-epsilon-RIと結合することを示した。このことから、生体内において、STAP-2はアレルギー反応を抑制すると考えられた。これら結果を、J Immunolに報告した。 これら結果から、STAP-2発現の人為的操作により、炎症反応やアレルギー反応を制御できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STAP-2欠損マウスを用いた生体内作用の解析は、予定通りに進行している。さらに、STAP-2人為的操作の対象疾患について、その可能性について検討を進めていく。また、STAP-2と類似の構造を持ち同様の機能を有すると考えられるSTAP-1を欠損するマウスを入手することができた。STAP-2とSTAP-1両遺伝子を欠損するダブルノックアウトマウスを作製し、STAPファミリー蛋白の機能を解析していくことが可能となった。 STAP-2立体構造の解析については、精製蛋白の可溶化の段階で難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
STAP-2の人為的操作による治療対象候補疾患の幅を広げるため、疾患発症や病態へのSTAP-2の関与に関する研究を今後も続けていく。具体的には、①BCR-ABLキメラ遺伝子による慢性骨髄性白血病発症および薬剤感受性②造血幹細胞移植時のGVHD発症③EBウイルス再活性化によるリンパ増殖性腫瘍の悪性度などへのSTAP-2の関与について解析を進めていく。さらに、STAP-2と類似の構造を持ち、同様の機能を有すると考えられるSTAP-1の生体内役割についても解析を行う予定である。また、STAP-2とSTAP-1両遺伝子を欠損するダブルノックアウトマウスを作製し、STAPファミリー蛋白の機能を解析していく。 STAP-2立体構造の解析については、今後、同分野の専門家や企業との連携も視野に入れて研究を進めていく。
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