研究課題
基盤研究(C)
我々はin vitroにおいてマウス造血幹細胞分画LSKをFLT3-ligandのみで培養することにより、定常状態でのDC分化(FL-DC)を誘導する系を樹立した。この系においてLSK分画に白血病関連遺伝子を導入した後にFL-DCを誘導し、白血病関連遺伝子がFL-DC分化に及ぼす影響について検討した。その結果、FLT3やRasの活性化変異体を除くtype Iの白血病関連遺伝子変異においては、FL-DC分化が障害されること、conventional DC(cDC)がplasmacytoid DC(pDC)に比して有意に誘導されることを示された。この結果を基に、種々の白血病関連遺伝子を有する造血腫瘍患者において、腫瘍由来のDC分画の存在を検討することを行った。TEL-PDGFRbetaを有する慢性骨髄単球性白血病(CMMoL)においてDC分画を検討した結果、正常に比較してDC分画は1/7に低下しており、マウスLSKを用いた実験結果と合致していたが、pDC/cDC比は8/3でありマウスLSKの結果とは異なっていた。さらにこれらのDCが真に腫瘍由来かどうか確認するために、各cDC, pDC分画をソーティングし、定量的PCRにてTEL-PDGFRbetaの発現を確認した。腫瘍細胞分画が濃縮されていると考えられる単球分画をソーティングし、その分画でのTEL-PDGFRbeta発現量を基準に比較すると、cDC分画の発現量は2倍、pDC分画は0.6倍の発現であった。この結果から、TEL-PDGFRbetaを有するCMMoL例においては腫瘍クローン由来のcDCが存在すること、またpDCの一部は腫瘍クローンであるが一部は正常クローンの可能性があることが示唆された。
3: やや遅れている
マウスでの実験系においては大変興味深い結果が得られているが、本研究の主眼は、実際の臨床例におけるDC分化の検討にあり、その点では症例解析に適切な症例が限られていることが問題と言える。また本来DCは末梢血に極めて少数しか存在せず、その解析には困難性があることも関連している。
今後、継続して広く症例集積を進めることに尽力する。また現在single cell PCRにより、1細胞毎に腫瘍由来の遺伝子異常を有しているかどうかを明らかとすることが可能となりつつある。本手技により、少数のDC分画においてもその由来について検討を行うことが可能となりうると考える。
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