研究課題
我々は、これまでin vitroでマウス造血幹細胞分画からDC分画を誘導する系において、白血病関連遺伝子がDC分化に与える影響について検討を行ってきた。実際の白血病細胞においてDC分化が生じているか、またその白血病細胞由来DCが腫瘍特異的分子に対する免疫応答を生じる機能を有しているのかについては、本研究において更なる検討を目指している点である。急性骨髄性白血病例で、白血病細胞がCD11c+CD4+CD14-を示し自然にDC分化を示した例を経験し、白血病細胞のDC機能を評価する例となりうると考えられた。本例は難治性のため同種造血幹細胞移植を行ったが、その際生着不全のため非血縁者由来の骨髄と臍帯血の両者が移植されることとなった。その後、day28の時点で末梢血顆粒球の生着を確認し、day81の時点で完全に臍帯血由来となった。一方、末梢血のT細胞においては、day175まで臍帯血由来と、骨髄由来の細胞が共存した。本例はday91の時点で骨髄、髄液に再発を認めたが、免疫抑制剤の減量によりその後白血病の再発は認めなかった。この例においては、腫瘍特異抗原としてWT1が存在していたので、WT1に対する免疫応答について検討を行った。その結果、WT1テトラマーに対するCD8+T細胞分画を認めた。このことは、DC分化を示した白血病細胞が有効に腫瘍特異抗原をT細胞に提示できることを示している。またCD4+T細胞、CD8+T細胞の各分画での臍帯血、骨髄のキメリズム解析から、腫瘍特異抗原に反応するT細胞は、臍帯血T細胞内にあり、骨髄由来T細胞は、臍帯血由来T細胞の免疫応答を強化するものとして機能していた可能性が示唆された。今後も特に骨髄系白血病細胞のDC分化の有無について確認し、特に造血幹細胞移植例に着目しその免疫応答の機序について検討を行っていく予定である。
3: やや遅れている
現在、マウス実験より実際の症例解析を進めていく方向性にある。その点において、症例の集積を進める必要がある。末梢血に少数しか存在しないDCの機能解析に困難性があることも関与している。
これまで、DCが白血病由来かどうかを検討するためには、特異的染色体異常のFISHを用いていたが感度の点で問題があった。Digital PCRを用いた解析方法を樹立し、本手技によりDC分画における腫瘍細胞特異的遺伝子の存在確率がより感度よく計測できると考えられる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 図書 (1件)
Exp Hematol.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.exphem.2015.01.002.
Chemotherapy
巻: 60 ページ: 168-173
10.1159/000371839