研究実績の概要 |
我々はマウス造血幹細胞分画LSKをFLT3-ligandのみで培養することにより、定常状態でのDC分化(FL-DC)を誘導する系を樹立した。この系においてLSK分画に白血病関連遺伝子を導入した後にFL-DCを誘導し、白血病関連遺伝子がFL-DC分化に及ぼす影響について検討した。その結果、FLT3やRasの活性化変異体を除くtype Iの白血病関連遺伝子変異においてはFL-DCの分化が障害されること、conventional DC(cDC)がplasmacytoid DC(pDC)に比して有意に誘導されることを示した。TEL-PDGFRbetaを有する慢性骨髄単球性白血病患者においてDC分画を検討した結果、正常に比してDC分画は1/7に低下し、マウスでの実験結果に合致していた。また、cDC分画のほとんどは腫瘍クローン由来であることが明らかとなった。次に急性骨髄性白血病例で白血病細胞がCD11c+CD4+CD14-を示し自然にDC分化を示した例において、白血病細胞のDCとしての機能の有無を評価した。本例は、生着不全のため結果的に臍帯血と非血縁者由来骨髄の両者の同種造血幹細胞移植を施行した。テトラマー解析により腫瘍特異抗原であるWT1に対するCD8+T細胞分画を認め、DC分化を示した白血病細胞が有効に腫瘍特異抗原をT細胞に提示できることを示していた。最終年度は、20代の女性に肩関節から鎖骨上に発症した軟部腫瘍の組織球系分化について検討を行った。肩関節内の腫瘤組織からは確定診断は困難でatypical epitheliodi sarcomaの診断であった。各種表面マーカーの解析からはCD68+/-,lysozyme+/-,CD1a+/-, TCL-1+/-, CD163+/-, INI-1+, IgH/TCR rearrangementなしであり、組織球系分化が疑われた。本腫瘍の全エクソーム解析を行った結果、MAP2K1の変異Glu51Valが認められ、組織球系腫瘍の可能性が示唆された。
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