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2014 年度 実施状況報告書

造血器悪性腫瘍共通発症機構の解明とそれに基づいた抗癌剤開発

研究課題

研究課題/領域番号 25461420
研究機関京都大学

研究代表者

上久保 靖彦  京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60548527)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードCBF白血病 / MLL白血病 / BCR-ABL白血病 / APL白血病 / バーキットリンパ腫 / シュミレーション創薬 / DDSナノテクノロジー
研究実績の概要

遺伝子Aが造血器悪性腫瘍発症・増殖・維持に共通する必須因子と考え、遺伝子A抑制(shRNAi、A抑制剤の2方法)により、ヒト各種造血器悪性腫瘍の増殖及び維持の抑制を詳細検討した。
PhALL・CML白血病2種において、遺伝子A抑制により、BCR-ABL遺伝子は転写レベルで抑制された。その下流PathwayであるJAK-STAT、PI3-AKT、MAPK経路が各々抑制された。それは腫瘍抑制遺伝子Bの安定化による蛋白増加に由来する活性化により、白血病細胞は細胞周期停止(G1/S停止)及びアポトーシス促進因子(PUMA、BAXなど)が誘導されることによる。これはT351I株においても同様であり、TKI耐性を克服できることが示唆された。APL白血病においては、遺伝子A抑制によりPML-RARA融合蛋白が劇的に消失し好中球に分化した。同時にPML Body(根治マーカー)が核内に再構成されした。ATRA耐性、ASO耐性株においても本効果は同様であることから、両剤耐性克服が可能であることが示唆された。MLL白血病では遺伝子A抑制により、MLLヒュージョン遺伝子が転写レベルで抑制され遺伝子Bが増加、腫瘍促進に重要な遺伝子C・Dが転写レベルで抑制された。CBF白血病では、白血病ヒュージョン蛋白が消失し分化が誘導された。Burkittリンパ腫では、遺伝子A抑制により、遺伝子C・Dが転写レベルで抑制された。これらのことから遺伝子Aは白血病ヒュージョン遺伝子を正に制御、腫瘍抑制遺伝子Bを抑制、細胞周期を促進、アポトーシスを負に制御することにより、細胞増殖と維持に貢献していることが判明した。ヒト白血病細胞Xenograftモデルを作成することに成功した。遺伝子AcKOと白血病cKIマウスジェネティクス実験を開始した。ビボモデルでの治療効果解析、副作用解析に進めている。遺伝子Aを抑制するための創薬研究で、スーパーコンピューター京によるシュミレーション創薬を開始した。(知財申請準備中のため、一部領域用語を伏せて記載した。)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

各種造血器悪性腫瘍に共通の増殖機構候補因子を同定し、その因子を抑制(shRNAiや抑制剤法)することにより実際に、腫瘍増殖が抑制されるか?維持されなくなるか?その両方における詳細を検討し、申請者の仮説が正しいことが、各種白血病及びリンパ腫(CBF白血病、MLL白血病、BCR-ABL白血病、MLL-AML白血病、MLL-ALL白血病、APL白血病、バーキットリンパ腫、DLBCLリンパ腫、FLリンパ腫)ヒト細胞株レベルで実証された。また遺伝子A抑制コンセプトによる腫瘍抑制効果は、各種白血病ヒュージョン遺伝子を直接的に転写抑制し、その下流経路におけるエフェクターを転写レベルで抑制することによること、細胞周期を停止させること、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導することなど、その詳細のメカニズムも解明することができた。このことから遺伝子Aが腫瘍共通の増殖維持機構の最も重要な因子であることを解明した。ヒト白血病Xenograftモデルを新規構築することができたことから、希少なビボモデルでの解明段階に入ることができた。
創薬研究においては、共同研究者と共にスーパーコンピューター京を利用したシュミレーション創薬を開始した。また既存同定薬剤をDDSナノテクノロジーを用いて、徐放化ゲルにするプロジェクトを並行して行っている。
以上から、造血器悪性腫瘍共通増殖機構として重要な遺伝子群の同定は造血器悪性腫瘍の新規治療戦略の有力な候補となることが判明した上、既存薬の抵抗性克服の大きな可能性を有している。
ヒト白血病細胞株レベルの検証完了だけではなく、ヒト白血病Xenograftモデル、マウスジェネティクスモデルなど希少な生体モデルでの検証が進んでいること、オリジナルな創薬研究のため、既にスーパーコンピューター京を利用したシュミレーション創薬系に乗せることができたこと、またドラッグデリバリーレベルの研究を並行して開始できたことから、当初の計画以上に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

今回同定することができた、造血器悪性腫瘍共通の増殖機構遺伝子Aは、多彩な疾患(固形腫瘍、小児がん、ウイルス性感染症、代謝性疾患、慢性炎症など)に関与していることが判明しているため、固形腫瘍(乳癌、食道未分化型扁平上皮癌、Her2陽性胃癌、VHL陰性腎癌)小児がん(神経芽腫、肝芽腫、ラブドイド腫瘍、骨肉腫など)、脂肪酸代謝での研究に既に範囲を広げ、各々のヒト細胞株を使った実験で、遺伝子A抑制コンセプトは著効することが判明しつつある。現在ヒト白血病Xenograftモデルはほぼ完成したことから、ヒト乳癌Xenograftモデル、消化器がんXenograftモデルなど固形腫瘍モデルを準備中である。遺伝子A抑制コンセプトにより、これら多彩なヒト癌Xenograftモデルで、生体内治療効果判定を行う。また遺伝子Aコンディショナルノックアウトマウスと白血病ノックインマウスを利用したマウスジェネティクスが進行中であることから、完全な遺伝子A欠失条件下での発症抑制を証明する段階となっている。造血器腫瘍及び固形腫瘍の【発症】【増殖】【維持】の各Phaseに共通する腫瘍機構である可能性が高いことから、固形腫瘍にも奏功する新規抗腫瘍戦略としてさらに検証を進める。
創薬研究においては、現在スーパーコンピューター京を用いたシュミレーション創薬を開始していることから、早期に新規遺伝子A抑制剤構造式を同定し、精製Phaseに移行する。
精製した低分子化合物は、共同研究下において、DDSナノテクノロジーを用いた徐放化ゲルに内包され、PharmacoDynamics(PDX)、PharmacoKinetics(PK)解析を行い、またビボでの副作用解析(骨髄コロニーアッセイや、PB検索、マウス皮下局所投与による結合織での副作用解析)を実施する。(既に既存薬での徐放化ゲル内包に成功)生体モデルでの解析をさらに進めた上、臨床試験を推進する方策を考慮している。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (4件)

  • [雑誌論文] Enhancement of neutrophil autophagy by an IVIG preparation against multi-drug-resistant bacteria as same as drug sensitive strains2015

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Itoh, Hidemasa Matsuo, Naoko Kitamura, Sho Yamamoto, Takeshi Higuchi, Hiromu Takematsu, Yasuhiko Kamikubo, Tadakazu Kondo, Kouhei Yamashita, Masataka Sasada§, Akifumi Takaori-Kondo, Souichi Adachi
    • 雑誌名

      Journal of Leukocyte Biology

      巻: 未定 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Adverse Prognostic Impact of KIT Mutations in Childhood CBF-AML: the Results of the Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group AML-05 Trial2015

    • 著者名/発表者名
      Mayu Tokumasu, Chisato Kubota-Murata, Akira Shimada, Kentaro Ohki, Yasuhide Hayashi, Akiko Saito, Junichiro Fujimoto, Keizo Horibe, Miho Nagao, Hiroshi Itoh, Yasuhiko Kamikubo, Hideki Nakayama, Akitoshi Kinoshita, Daisuke Tomizawa, Takashi Taga, Akio Tawa, Shiro Tanaka, Toshio Heike, and Souichi Adachi
    • 雑誌名

      Leukemia

      巻: 未定 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The subtype-specific features of EVI1 and PRDM16 in acute myeloid leukemia.2015

    • 著者名/発表者名
      Matsuo H, Goyama S, Kamikubo Y, Adachi S
    • 雑誌名

      Haematologica

      巻: 100(3) ページ: 116-117

    • DOI

      10.3324/haematol.2015.124396.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Generation of induced pluripotent stem cells derived from primary and secondary myelofibrosis patient samples2014

    • 著者名/発表者名
      Hosoi M, Kumano K, Taoka K, Arai S, Kataoka K, Ueda K, Kamikubo Y, Takayama N, Otsu M, Eto K, Nakauchi H, Kurokawa M.
    • 雑誌名

      Exp Hematol

      巻: 42(9) ページ: 816-25

    • DOI

      10.1016/j.exphem.2014.03.010. Epub 2014 May 20.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] がん・成人病への挑戦:各種癌共通増殖機構の解明及びそれをターゲットとした新規エピジェネティック創薬2015

    • 著者名/発表者名
      上久保靖彦
    • 学会等名
      京滋血液研究会
    • 発表場所
      公益財団法人HLA研究所 京都
    • 年月日
      2015-04-16 – 2015-04-16
    • 招待講演
  • [学会発表] エピジェネティック制御による遺伝子変異阻害メカニズムの解明と難治性急性骨髄性白血病個別化治療法の開発2015

    • 著者名/発表者名
      野路 由依 矢野 礼佳 上久保 靖彦 足立 壮一
    • 学会等名
      第29回京都がん研究会
    • 発表場所
      京都教育文化センター 2F ホール 京都
    • 年月日
      2015-03-20 – 2015-03-20
  • [学会発表] 小児がんへの挑戦:夢の創薬 日米~アジア小児がん学術ネットワークの創生2015

    • 著者名/発表者名
      上久保靖彦
    • 学会等名
      第20回西日本小児がんセミナー
    • 発表場所
      大阪リーガロイヤルホテル 大阪
    • 年月日
      2015-02-28 – 2015-02-28
  • [学会発表] 腫瘍抑制因子の逆説的要求性:新規白血病診療・治療戦略2015

    • 著者名/発表者名
      上久保靖彦
    • 学会等名
      第33回京都大学小児血液腫瘍研究会
    • 発表場所
      京都タワーホテル 京都
    • 年月日
      2015-02-21 – 2015-02-21
  • [図書] 日本小児血液・がん学会雑誌2015

    • 著者名/発表者名
      上久保靖彦
    • 総ページ数
      8
    • 出版者
      中西印刷株式会社
  • [備考] 京都大学大学院医学研究科人間健康科学専攻 癌・創薬イノベーション研究室

    • URL

      http://www.med.kyoto-u.ac.jp/organization-staff/research/human_health/mt0303/

  • [備考] Laboratory of Oncology and Strategic Innovation

    • URL

      http://www.med.kyoto-u.ac.jp/en/organization-staff/research/human_health/mt0303/

  • [備考] 京都大学医学部人間健康科学科検査技術科学専攻血液・生体防御学研究室

    • URL

      http://adachilab.web.fc2.com/member.html

  • [備考] 大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学

    • URL

      http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/gts/research_d.html

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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