研究課題
平成27年度研究では前年度に引き続き、慢性期CML幹細胞に対する治療標的候補分子の抽出を目指す研究を継続した。初発慢性期CML患者骨髄細胞中の幹細胞分画および骨髄球系前駆細胞分画をFACSで純化し、FISH法をもちいてBCR-ABL陽性CMLクローンが占める割合を詳細に解析した結果、CD34陽性CD38陰性の幹細胞分画中に占めるCMLクローンの比率は1~98%と症例によって大きなばらつきが認められた。興味深いことに、幹細胞分画中のCMLクローン比率は、巨核球前駆細胞数と強い正の相関が認められた。近年、マウス正常造血において、巨核球が幹細胞ニッチを形成するとの報告がなされているが、上記の解析結果はCML由来巨核球がCML幹細胞の生存および自己複製を支持している可能性を示す興味深いデータと考えられた。CML由来巨核球がCML幹細胞を支持することをin vitroで検証し、そのメカニズムを探る研究を新たに開始しているが、未だポジティブな結果は得られていない。一方、すべての慢性期CML患者でcommon myeloid progenitor (CMP)分画が拡大しており、同分画の90%以上がBCR-ABL陽性CMLクローンで占められていた。つまり、CMLクローン増殖は幹細胞分画では必ずしも起こっておらず、CMP分画で正常細胞に対する増殖優位性を獲得することが明らかとなった。このCMP分画のマイクロアレイ解析から、CMLクローンに極めて特徴的な遺伝子発現パターンが抽出を試みた。なかでも、顆粒球分化に重要な役割を担う転写因子IRF8の強い発現抑制が認められた。IRF8ノックアウトマウスはCML様の骨髄増殖性疾患を発症することが知られていることから、CMLクローンの増殖優位性獲得にIRF8の発現抑制が関与する可能性が示唆される。IRF8の発現が抑制されるメカニズムについて、non-coding RNAの関与を中心に引き続き解析を行ったが、未だポジティブな結果は得られていない。
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http://www.1nai.med.kyushu-u.ac.jp