研究課題
基盤研究(C)
我々は、慢性骨髄性白血病 (CML) 細胞が、低酸素適応により幹細胞様形質を獲得することを報告した(Cell Death Diff 2010)。今年度の研究では、低酸素適応時に誘導されるHIF-1αのトランスジェニック(TG)マウスのおいて、リンパ系腫瘍が高発現することを報告した(PLOS One,8:e57833,2013)。そしてHIF-1αの高発現がCML幹細胞に及ぼす影響を検討するため、HIF-1αTGマウスの造血幹細胞に bcr-abl遺伝子を導入し、その性状に関して検討を行った。現在研究は進行中であるが、HIF-1α高発現CML細胞は、幹細胞性が高いことが示唆される結果が出てきている。また2-Hydroxypropyl-β-cyclodextrin は従来難溶性薬剤の溶媒として用いられてきたものであるが、CML細胞からコレステロールを抜き出すことによって、細胞死を誘導することを報告した。さらに低酸素適応によって多剤耐性をきたしたCML株に関して、2-Hydroxypropyl-β-cyclodextrin が親株と同等の濃度で有効であることを見出した。この結果は、骨髄内の低酸素領域で幹細胞化したCML幹細胞にも有望な薬剤であることを示唆する。また我々が低酸素対応時に高発現することを発見したTRPC-1については、ノックアウト (KO)マウスの造血幹細胞の機能について検討を進めている。
3: やや遅れている
我々は、低酸素適応時に増加する10個の遺伝子を同定しているが、現在のところその中ではTRPC1のみが着手できている状態であり、予定していDLK-1などの解析が始められていない。その点において「やや遅れている」と判断した。ただし、10個の中には入らないが低酸素誘導時に重要と考えられているHIF-1αについては論文化もでき、さらにbcr-abl導入細胞の解析も始まっている。また低酸素適応細胞にも有望な薬剤として2-Hydroxypropyl-β-cyclodextrin を発見した点は研究ん進行状況としては問題ないと考える。
TRPC1 KOマウスの造血幹細胞の機能について更に解析を進める。その後同マウスの造血幹細胞にHIF-1αで行なっている同様の手法で bcr-ablを導入し、CML細胞におけるTRPC1の意義を明らかにする。また2-Hydroxypropyl-β-cyclodextrin 以外に、低酸素適応CML細胞に有効な薬剤のスクリーニングを進めていく。
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http://www.intmed.med.saga-u.ac.jp/kenkyuugroup/group/blood-hp/