研究課題/領域番号 |
25461426
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西片 一朗 宮崎大学, 医学部, 助教 (50253844)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ATL / Exosome / TSLC1 / CAV1 / TFR1 / NF-kB / p47 / Tax |
研究実績の概要 |
(1)ウシExosome不含FBSを用いた細胞培養系から、ATL細胞由来ヒトExosomeを調製・回収、WB解析を行ったところ、対照の非ATL細胞を含む、全検討例でExosomeマーカーと呼ばれるCD63分子やCD9分子の存在は確認されたが、ATL細胞特異的高発現を示すCAV1およびTFR1両分子は、Exosomeにおいても、ATL細胞特異的に検出された。これらの因子の検出のため、高感度かつ多検体処理が可能な手法として知られるAlphaLISA法を、CD63との組合せにより、Exosomeでの検出系へと転用したところ、TRF1分子をExosomeサンプル中に検出することができたものの、CAV1は見出すことができなかった。CAV1分子の存在様式が内在型であることが原因と思われる。興味深いことに、本法では、WB未検出であったTSLC1分子が検出され、ATLの新規診断法としての可能性が示唆された。
(2)前回、TSLC1発現に重要とされたp47に着目した検討を行った。TSLC1を発現するTax無(低)発現ATL細胞で、p47を強制発現したところ、標的分子NEMOの発現が低下したばかりでなく、TSLC1の発現も低下した。さらに、ゲノム網羅的なDNAメチル化解析法とBisulfite sequence法での検討により、これらの細胞では、p47遺伝子のプロモーター領域が高頻度にメチル化されており、これを主な要因とするp47の発現低下がTSLC1の発現に寄与することが示唆された。一方、極低値のp47蛋白質レベルを示したTax高発現ATL細胞をプロテアソーム阻害剤MG132で処理したところ、p47の著明なレベル回復が認められたことから、Taxによるプロテアソーム分解誘導の存在が示唆された。これらの結果から、ATL細胞におけるp47の調節異常に伴うTSLC1高発現機構の存在が想定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度まで所属していた宮崎大学医学部の基礎研究棟における大掛かりな耐震補強改修工事に絡んだ研究環境の急激な改変の影響が甚大。即ち、研究スペースの大幅な減少に伴い、課題スケジュールの推進に必要な試薬の事前調達やサンプルの事前調製を実施する場合にも、安全・安心な保管スペースに余裕がなく、制限を受けることが多く、合わせて、研究機器の帰属や管理体制にも大幅な改変がなされ、システムは未完成で、十分に機能できていない状態であったことが達成遅延の主たる理由と考える。更に、本年度の研究遂行期間の途中から所属研究機関を変更したことも大きい。即ち、国立大学法人宮崎大学医学部機能制御学講座腫瘍生化学分野から学校法人順正学園九州保健福祉大学生命医科学部生命医科学科に所属変更したことから、研究に用いる実験データやサンプルの帰属や管理等に一定の制限が生じたことも、遅延の一端と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策に、研究対象をエクソソーム由来のCAV1蛋白質に絞る以外、用いる実験手法や実験戦略に特段の変更はなく、予定通りと考えている。即ち、新たに所属する研究機関には、概ねすべての、必要な機器・機材、並びに設備が用意されていたこと、研究スペースの大きさと研究員の数とのバランスが取れており、事前の試薬調達やサンプル調製などに関した過密な実験計画を回避できること、一部の測定の外注も可能な環境となったことなど、実験環境に問題はないと考える。またCADM1とCAV1には、ATL特異的高発現蛋白質として、ATL発症前診断に繋がる可能性が極めて高く、これらの因子を用いた診断法の開発に注力したいと考えるが、CADM1には非エクソソーム蛋白質としての側面もあり、高感度測定系の開発が別途行われており、今後の研究をエクソソーム蛋白質CAV1に集中していく必要があると考える。
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