研究概要 |
申請者らは,β-カテニンに結合し,その転写活性を正に制御するBCL9が多発性骨髄腫(MM)の細胞増殖,転移・浸潤,腫瘍血管新生に重要であることを見出している (Takada K et al, Cancer Res 2009),さらに,BCL9転写複合体がMM治療の標的として有望であることを明らかにしている (Takada K et al, Sci Transl Med 2012).一方,BCL9の標的遺伝子群およびその発現調節機構は不明である. 本研究目的は,Chromatin Immunoprecipitation (ChIP)-Sequence (Seq) (ChIPSeq) 法を用いてMMにおけるBCL9による転写制御ネットワーク機構を解明し,MMに特異的な新規治療標的分子を同定することである. 当該年度では,control shRNA-およびBCL9 shRNA-MM1S樹立細胞株(sh-cont, sh-BCL9)を用いて,BCL9抗体によるChIPSeqを行った.得られたシークエンスデータをBowtie packageを用いてGenome browserにマッピングを行い,BCL9標的遺伝子群を同定した.さらに,ChIPSeqで得られたBCL9標的遺伝子候補を, GEPデータ (Takada K et al, Cancer Res 2009) とintegrateし,真のBCL9標的遺伝子候補を抽出した.具体的には,ChIPSeq でsh-contでenrichされるが, sh-BCL9では検出されず,かつGEPでsh-contと比較してsh-BCL9で有意にその発現が低下した遺伝子を抽出した.また,MEME softwareを使用し,BCL9結合シークエンスを同定した.引き続き、ChIPpeakAnno bioconductor packageとENSEMBL databaseでシークエンスの1次解析を行った結果,BCL9結合領域の分布と転写開始点からの距離を算出することが可能であった.sh-BCL9においてはBCL9結合領域が約68 %減少しており,sh-BCL9で検出されなかった遺伝子がBCL9標的遺伝子候補である.
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