研究課題
8q24染色体増幅を示す難治性骨髄性白血病における新規ゲノム異常を解析している.マーカー染色体を有する急性骨髄性白血病(AML)の1例,AML 39例,骨髄異形成症候群(MDS)1例,白血病細胞株HL60,KG1,K562を対象とした.方法は,染色体分染法,spectral karyotyping (SKY),fluorescence in situ hybridization,オリゴヌクレオチドアレイ,RT-PCR,RQ-PCR,bubble PCR,塩基配列決定法を用いた.8q24染色体増幅を難治性AMLとHL60で認め,NSMCE2再構成による2種類のキメラmRNA,PVT1-NSMCE2とBF104016/CCDC26-NSMCE2を同定した.前者は,マーカー染色体を有するAMLで認められたものであり,PVT1エクソン1aとNSMCE2エクソン3が融合していた.後者はHL60で認められたものであり,BF104016エクソン1とNSMCE2エクソン6が融合していた.BF104016はCCDC26のエクソン4の一部をエクソン1としており,CCDC26の新規スプライスバリアントと考えられた.これら2種類のキメラmRNAを RT-PCRによりスクリーニングし,AML 1例とK562でPVT1-NSMCE2を検出し,BF104016 -NSMCE2は検出されなかった.これらの異常NSMCE2キメラmRNAの発現をRQ-PCRで定量的に検出できた.PVT1とCCDC26は何れも非翻訳遺伝子long intergenic non-coding RNA(linc RNA)であり,NSMCE2は細胞核内における遺伝子の発現制御や活性化に関与する翻訳遺伝子である.非翻訳遺伝子と翻訳遺伝子で形成されるこれらのキメラmRNAの未知の重要な機能が示唆される.また,PVT1,CCDC26,NSMCE2は全て8q24に存在する遺伝子であり,増幅にともなうキメラ遺伝子の形成機構としてchromothripsis(クロモスリプシス)が考えられた.以上の結果は,白血病発生に関与する新しい分子機構を解明する手がかりとなり得ると考えられる.
2: おおむね順調に進展している
PVT1-NSMCE2をAML臨床検体で新たに1例同定できた.PVT1-NSMCE2とBF104016 -NSMCE2による異常キメラNSMCE2の発現を定量的に評価できた.また,8q24染色体増幅を認めない白血病細胞株でもPVT1-NSMCE2を検出できたことにより,研究の新たな展開が期待できる.
NSMCE2のタンパク発現について検討する.また,PVT1-NSMCE2をsiRNAでノックダウンし,機能解析を実施する.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
J Hematol Oncol.
巻: 7 ページ: 68-73
10.1186/s13045-014-0068-2