研究課題
基盤研究(C)
申請者らは、クラスリン被覆小胞を介した物質輸送に関与する分子CALMの造血細胞における機能解析を行ってきた。その中で、変異型サイトカイン受容体を導入した白血病細胞株においてCALMの発現や機能を抑制した場合、腫瘍形成能が強く阻害される結果を得た。本研究では、この機序について詳細に解析し、サイトカイン受容体の細胞内輸送を操作することによる抗腫瘍効果について検討を行うことで、難治性の白血病に対する新たな治療法の基盤を確立することを目的とする。これまでの報告から、恒常的活性化型c-kit, Flt3(c-kit V814変異, Flt3 ITD変異)はそれぞれゴルジ体、小胞体に局在し、異所性のシグナルを細胞内に伝えることが知られている。CALM KOマウス胎仔肝由来の造血幹細胞(LSK)をFACSにて分離し、c-kit V814, Flt3 ITD (変異型RTK)をレトロウイルスを用いて導入した。その結果、KOマウスLSKにおける変異型RTKは、細胞質に散在し、エンドソーム、ゴルジ体、リソソーム、小胞体いずれとの共局在を示さなかった。次にc-kit V814変異, Flt3 ITD変異の下流に位置するシグナル伝達分子Akt, STAT5の活性を解析した結果、KOマウスLSKでは各々の活性が、野生型(WT)マウスLSK細胞に変異型RTKを導入した場合と比較して、著明に抑制されていた。現在、CALM分子内のクラスリン結合ドメインやAP180相同ドメインなどの機能ドメインを欠いたCALMをKOマウスLSKに導入することで、局在、および異所性シグナルの変化に寄与するドメインの同定を試みている。また、機能ドメインを欠くCALMを、変異型RTKを発現させたCALM KO細胞に導入し、白血病発症能について同系マウスへの移植実験を行うことで評価、解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の計画として、1. 恒常的活性化型c-kit, Flt3の細胞内局在、及びシグナル伝達におけるCALMの機能2. 変異型RTKによる白血病発症におけるCALMの機能についての解析を予定した。ほぼ計画通りに研究を遂行できていると考えられる。
平成26年度以降は、RTKの細胞内外の輸送制御におけるCALMの機能とCME阻害剤の作用点との関連を明らかにするとともに、CME阻害剤の増殖抑制効果、抗腫瘍効果についての評価を行う計画である。
本年度分は、主に実験動物の購入に充当する費用としていたが、予定よりも少額に収まった為、次年度に繰り越すととした。次年度以降の試薬、実験動物等の購入費用として使用する予定である。
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