研究課題
成人T細胞白血病はHTLV-1の末梢T細胞への感染によって引き起こされる腫瘍性疾患である。様々な病型があるが、ATLの70%に高カルシウム血症が認められている。これはATL細胞が分泌するPTHrPの作用によって引き起こされると考えられてきた。しかし骨髄内でのATL細胞の動態には不明な点があった。我々はTax-Transgenic mouse(Tax-Tg) ATLモデルマウスを用い、ATL癌幹細胞の同定に成功していた。そこでこのATLSCsにGFPを導入し、ATLSCを可視化することに成功した。その結果、ATLSCsはレシピエントマウスに移植後、脾臓、骨髄を中心にMigrationし、定着・細胞増殖した後、各種組織へ浸潤することが明らかとなった。そこで、ATLSCsの組織内局在・分布を調べた結果、脾臓では血管系ニッチと思われる部位に、骨髄でも同様に血管系ニッチと思われる部分に細胞が認められた。一方、骨髄では破骨細胞の増加が認められ、一部の骨梁に存在しているATL細胞は、破骨細胞近傍にも存在したことから、なんらかの相互作用が存在していることが示唆された。そこで、幾つかの破骨細胞の阻害剤を添加したとこと、骨髄での浸潤は有意に抑えられたが、脾臓では抑制は部分的であった。これらのATLSCsを分取し、マイクロアレイ解析を行った結果、ATLSCsは一部造血幹細胞のような幹細胞と類似の遺伝子発現パターンを有していることが明らかとなった。また、各種ストローマとの相互作用を明らかにする目的で、投与前・後でのFACS解析を行った結果、破骨細胞が減少していたが、血管内皮は変化がなかった。脾臓においても同様であった。よって、骨髄と脾臓では異なる分子基盤でがATLSCが制御・維持されている可能性が示唆された。
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Oncotarget
巻: 7(32) ページ: 51027-51043.
10.18632/oncotarget.10210.