研究概要 |
健常人(健常人ドナー)あるいは悪性リンパ腫などの血液悪性疾患患者末梢血をリンパ球ソースとし、全血単核球を用いてIL-2, IL-15などのサイトカインと抗CD3抗体であるOKT3を用いて活性化NK細胞を培養増幅する有効な方法を検討しました。培養の際にT細胞の増殖を抑制する作用のあるタクロリムスの添加がNK細胞増殖に悪影響を及ぼさずにT細胞の増殖を抑制しうることが明らかとなりました。この際、ダルテパリンを添加することによって、通常使用されることの多い細胞性フィーダーを用いることなくてもNK細胞増殖効率が向上することが確かめられました。 この実験は培養増幅したNK細胞を用いた細胞療法の臨床応用を最終的な目的としていますので、GMPグレードの無血清培地にヒト血清を添加したうえで培養を行いました。また培養増幅したNK細胞が有する細胞障害活性の強さを白血病細胞株であるK562を標的細胞として検討した所、前感作なしで培養4時間後に強い細胞障害活性が確認されました。さらに培養増幅前後の各種NK細胞受容体の発現を比較検討したところ、CD94, NKG2A, CD158a, CD158b, CD158e1などの抑制性NK細胞受容体とNKG2D, NKp44などの活性型NK細胞受容体の発現が亢進していることが明らかとなりました。とくに活性型NK細胞受容体の発現であるNKG2D, NKp44の発現が強く亢進していました。 このように健常人ドナーのみならず血液悪性疾患患者末梢血からGMPグレードで細胞障害活性を有するNK細胞を大量に培養増幅することが可能であることが確認できました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常人(健常人ドナー)あるいは悪性リンパ腫などの血液悪性疾患患者末梢血をリンパ球ソースとし、全血単核球を用いてIL-2, IL-15などのサイトカインと抗CD3抗体であるOKT3、タクロリムス、ダルテパリンを用いることにより通常使用されることの多い細胞性フィーダーを用いることなく、GMPグレードの無血清培地にヒト血清を添加してNK細胞を培養増幅することが出来ました。 また培養増幅したNK細胞には前感作なしで培養4時間後にK562白血病細胞株に対して強い細胞障害活性が確認されました。 さらに培養増幅後にはNKG2D, NKp44などの活性型NK細胞受容体の発現が亢進していることが明らかとなりました。 このように健常人ドナーのみならず血液悪性疾患患者末梢血からGMPグレードで細胞障害活性を有するNK細胞を大量に培養増幅することが可能であることが確認できましたので、研究目的は概ね達成されています。
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