研究課題
健常人あるいは悪性リンパ腫などの血液悪性疾患患者末梢血をリンパ球ソースとし、特別な処理を行う事なく全血単核球を用いてIL-2, IL-15などのサイトカインと抗CD3抗体であるOKT3を用いて活性化NK細胞を培養増幅する有効な方法を検討し、培養の際にT細胞の増殖を抑制する作用のあるタクロリムスの添加がNK細胞増殖に悪影響を及ぼさずにT細胞の増殖を抑制しうることが明らかとなりました。またダルテパリンを添加することによって、通常使用されることの多い細胞性フィーダーを用いることなくてもNK細胞増殖効率が向上することが確かめられました。このような実験結果をふまえて、活性化NK細胞療法を臨床応用するためにGMPグレードの無血清培地にヒト血清を添加したうえで24 well plateではなく300mlバッグにてclinical scaleでの培養実験を行いました。このようにして培養増幅したNK細胞が有する細胞障害活性の強さを白血病細胞株であるK562を標的細胞として検討し、T細胞のような前感作を必要としない強い細胞障害活性が確認されました。再発難治の悪性リンパ腫の予後は不良ですが、抗CD20抗体リツキサンを抗がん剤と併用すると効果が期待されます。さらにリツキサンの抗腫瘍効果はNK細胞などによってもたらされます。そこで悪性リンパ腫患者末梢血より培養増幅した活性化NK細胞を用いた自家NK細胞療法についての臨床研究(培養増幅した活性化NK細胞の安全性に関するPhase I/II)を計画し、当院倫理委員会の承認のもと臨床研究を開始したところであります。
2: おおむね順調に進展している
健常人(健常人ドナー)あるいは悪性リンパ腫などの血液悪性疾患患者末梢血をリンパ球ソースとし、全血単核球を用いてIL-2, IL-15などのサイトカインと抗CD3抗体であるOKT3、タクロリムス、ダルテパリンを用いることにより通常使用されることの多い細胞性フィーダーを用いることなく、GMPグレードの無血清培地にヒト血清を添加してNK細胞を培養増幅することが出来ました。また培養増幅したNK細胞には前感作なしで培養4時間後にK562白血病細胞株に対して強い細胞障害活性が確認されました。このように健常人のみならず血液悪性疾患患者末梢血からclinical scale GMPグレードで細胞障害活性を有するNK細胞を大量に培養増幅することが可能であることが確認できるとともに、自家培養増幅NK細胞療法についての臨床研究(Phase I/II)を計画することができましたので、研究目的は計画以上に達成されています。
いままでNK細胞を培養増幅することは容易ではないとされており、大量のドナー末梢血アフェレーシス試料などより磁気ビーズを用いたCD56 positive selectionによって調整されていました。本研究では我々が開発した方法によって血液疾患患者末梢血などからGMPグレードで臨床にて使用可能なレベルまで大量に活性化NK細胞を培養増幅することが可能であることが明らかとなりました。今後はこの方法をさらに発展させ確立すると共に、自家培養増幅NK細胞療法の臨床研究(Phase I/II)を行って、その安全性を検討します。将来的には同種培養増幅NK細胞療法が可能となるようにNK細胞の培養、活性化の基盤を整備しさらなる臨床応用を目指します。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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