研究課題/領域番号 |
25461444
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
一瀬 白帝 山形大学, 医学部, 教授 (10241689)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自己免疫性出血病 / 高齢化社会 / 慢性難治性疾患 / 分子病態 / 自己抗体 / エピトープ解析 / ユニバーザルエピトープ / 質量分析 |
研究実績の概要 |
1.AH13症例の自己抗体のエピトープマッピング;昨年度にマウスモノクローナル抗体を用いて開発した方法で、実際に健常人あるいは抗FXIII-A自己抗体を含むAa型の血漿14検体を解析した。液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて同定した36ペプチドは、複数の検体に共通しているので、ユニバーサルエピトープの存在が示唆された。Ab型の血漿検体3例とB型の血漿検体についても同様な方法で現在解析中である。38種類の合成FXIII-Aペプチドを用いてAa型血漿検体8例、Ab型血漿検体1例についてエピトープ解析を行ったところ、5ペプチドを複数の検体が認識していることが判明した。 2.抗FXIII自己抗体を生成する根本的な原因の追究と抗原性の検討;F13遺伝子の多型性/変異を同定するために、次世代シーケンサーを用いてAH13症例8例のゲノムDNAを解析した。F13A遺伝子を解析したところ、8検体中6検体でアミノ酸レベルでの変異が検出された。F13B遺伝子を解析したところ、変異は第2寿司ドメインに集中していた。 3.酵素触媒作用を持つ抗体や自然抗体の検索;AH13症例や健常者に、FXIIIを分解する酵素活性を持つ自己抗体や自然抗FXIII抗体が存在する可能性を追究したが、該当する性状を持つ抗体は発見されなかった。 4.AH13の分子病態の基盤となる抗体の性状解析;今年度までに得られたAH13症例33名の検体を生化学的、免疫学的に詳細に解析して、血栓止血学領域のトップジャーナルに論文発表した。更に、B型抗体を持つ症例におけるF13活性低下の原因を追究する過程で、F13-BがF13-Aのフィブリンへの結合を促進し、その後のγ-二量体形成によってF13-Bがフィブリンから放出されるという、新しい機能と機序を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.平成27年度の研究で実施する計画であった、抗F13自己抗体産生の遺伝的背景の解析のための全ゲノム塩基配列決定実験を繰り上げて、先ずAH13症例8名において開始し、免疫応答関連遺伝子の多型性を解析中である。 2.平成27年度の研究で実施する計画であった抗F13自己抗体のIgGサブクラスを、これまでに診断して検体が利用できる症例33名において繰り上げて解析し、免疫抑制療法抵抗性=難治性との関連の解析を開始している。 3.F13-Bの新しい機能と機序を発見し、B型抗体による阻害が13活性低下の原因の一つであることを世界で初めて明らかにした。 4.AH13症例に発生した抗体はオリゴクローナルで少なくとも数種類の抗体の混合状態であり、中和型抗体と非中和型のクリアランス亢進型抗体が存在することを世界で初めて明らかにしたので、次年度の新しい研究テーマとすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.自己抗体産生の遺伝的背景の解析:以下の免疫応答関連遺伝子の多型性を解析する。A.CTLA(Cytotoxic T lymphocyteantigen/associated protein)-4はインテグリンの一種であり、活性化されたT細胞表面に発現して活性化を制御するので、その遺伝子多型(例えばCTLA-4遺伝子の+48Gアレル)を健常者と比較する。B.Human leukocyte antigen(HLA)クラスIIは外来性抗原由来ペプチドの抗原提示に関与しているので、AH13症例のHLAクラスII遺伝子のDRB1*とDQB1*サブタイプを決定する。特にDRB1*16やDQB1*0502などのサブタイプを健常者と比較する。 2.FXIII KOマウスにおける抗FXIII抗体の性状解析:症例に発生した抗体はオリゴクローナルで少なくとも数種類の抗体の混合状態であり、中和型抗体と非中和型のクリアランス亢進型抗体が存在する。そこで、我々が保有する3種類の抗F13-Aモノクローナル抗体と7種類の抗F13-Bモノクローナル抗体のそれぞれを、予めFXIII濃縮製剤と混合加温して免疫複合体を作製して、FXIII-A KOマウスあるいはFXIII-B KOマウスに投与して、生体におけるF13パラメーターの変動を観察する。また、各モノクローナル抗体を野生型マウスに投与して、生体におけるF13パラメーターの変動を観察する。この実験により、各抗体の試験管内の性状や生体内での性状とエピトープの関係が明らかになる。 3.免疫抑制療法に抵抗性で難治性症例の解析:長期にわたって抗F13自己抗体産生を継続している難治例の分子機序を追究する為に、自己抗体のIgGサブクラスを解析して完全寛解例と難治例の間で比較し、IgGサブクラス量と抗体価の相関関係や時間的推移を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
生化学領域の一流国際誌(Journal of Biological Chemistry)に論文を投稿した際には、約10万円の掲載費用を想定していたが、 1)投稿原稿ではSupplementに入れていた大きな図表を、全て本文に入れるよう採択時に要求されて、頁数が4頁以上増えた。 2)同じく、投稿原稿ではSupplementに入れていたカラーの図を、本文に入れるよう採択時に要求された。
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次年度使用額の使用計画 |
以上の理由により、増えた頁分の掲載料とカラー特別料金が加算され、約20万円の掲載費用が必要になり、また、実際の掲載日が5月8日と次年度になったため、経理処理を延期せざるを得なくなった。従って、平成26年度分の約10万円の残余予算と平成27年度分の予算の一部を合算して支払う予定である。
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備考 |
山形大学に以下2件の発明届けを提出した。 1.凝固第XIII/13因子(A2B2四量体)と遊離Bサブユニット(B2)を同時に測定する方法。2.スマートフォンを用いたイムノクロマトグラフィ法による検査結果の数値化システム(いつでもどこでもインスタント・イムノクロマト)
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