研究課題/領域番号 |
25461446
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西田 徹也 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80508929)
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研究分担者 |
伊藤 嘉規 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20373491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 免疫抑制受容体 / ウイルス抗原特異的T細胞 / 同種造血幹細胞移植 / 抗原提示細胞 |
研究実績の概要 |
平成26年度に同種造血幹細胞移植を行った16症例でサイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバールウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス-6(HHV-6)の末梢血ウイルス量をリアルタイムPCRにてモニタリングを行った。 ウイルス抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の新たな簡便な誘導方法として、末梢血単核球にエピトープペプチド、IL-2に抗4-1BB抗体を加えることで、強力な抗原提示細胞である樹状細胞に劣らないウイルス抗原特異的CTLを誘導できることを示した。 これまでに、Myeloid-derived suppressor cells (MDSC)は、その細胞表面上に発現するProgrammed death 1 (PD-1)のリガンドであるPD-L1が、T細胞上のPD-1と結合することで、抗原特異的CTLの機能を低下させることを明らかにしてきた。一方、PD-L1はCTL活性化に重要な抗原提示細胞(APC)である樹状細胞に高発現しているが、このAPCにおけるPD-L1の役割は明らかではない。そこで、我々は樹状細胞を用いてサイトメガロウイルス抗原特異的CTL(CMV-CTL)を誘導し、その培養中に抗PD-L1抗体を添加したところ、CMV-CTL誘導が抑制された。次いで、K562にHLA、共刺激分子(CD80,86)およびPD-L1を遺伝子導入した人工APCを作成、CMV-CTL誘導を試みたところ、PD-L1陽性人工APCでより多くのCMV-CTLが誘導された。以上より、PD-L1は慢性的な抗原刺激によるCTLの疲弊化に関与しているだけではなく、活性化の初期段階においては抗原特異的CTLの誘導を促進している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同種造血幹細胞移植後のウイルス感染症における抗原特異的T細胞上の免疫抑制受容体の発現と機能の解析を行うために、移植後のウイルス感染のモニタリングおよび単核球と血漿保存が順調に進んでいる。 MDSCによる抗原特異的T細胞機能低下にはPD-1/PD-L1が関与していることを示したが、抗原特異的T細胞を活性化させる抗原提示細胞上に発現するPD-L1の役割は詳細に解明されておらず、この点を明らかにすることで、腫瘍の微小環境などでの抗原特異的T細胞疲弊化のメカニズムのさらなる解明に繋がることが期待される。この研究遂行のための新たな作成した人工APCを用いて、今後、検討を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに保存した血漿や単核球を用いて、同種造血幹細胞移植後のウイルス感染や再発における抗原特異的T細胞の免疫抑制受容体発現について解析し、難治性ウイルス感染や再発のバイオマーカーを検討する。 また、樹状細胞上のPD-L1がCMV-CTLの誘導を促進している可能性が示されことから、共刺激分子とPD-L1を遺伝子導入した人工APCを用いてPD-L1の新たな役割について詳細に検討していく。さらに、WT1などの腫瘍抗原特異的CTL誘導における効果やPD-L1陽性人工APCで誘導されたCTLの機能解析などを行い、細胞療法への応用について検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
同種造血幹細胞移植後の検体(単核球や血漿)保存は進めているが、T細胞の機能解析やサイトカインなどの測定が予定より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの研究によりPD-L1の新たな役割の可能性が示唆されており、PD-L1による腫瘍抗原特異的T細胞の誘導など研究開始時点では予定されていない研究も行う必要があり、それらの研究遂行のための試薬を購入する予定である。
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