研究課題
プロフェッショナルな抗原提示細胞である樹状細胞には、正の共刺激分子であるCD80/86とともにPD-L1も高発現しており、T細胞が抗原刺激を受けて抗原特異的CTLが誘導される段階で、抗原提示細胞上のPD-L1がT細胞に対してどのように作用しているかは明らかにされていない。そこで、CD3陽性T細胞をサイトメガロウイルス(CMV) pp65 由来ペプチドをパルスした樹状細胞で刺激し、抗PD-L1抗体存在下でCMV-CTLの誘導を行ったところCMV-CTL誘導能が低下した。この結果から、樹状細胞に発現するPD-L1がCTL誘導において促進的に作用している可能性が示唆された。さらに、K562細胞株にHLAクラスI分子及びCD80/86、PD-L1を遺伝子導入した人工抗原提示細胞を作成し、抗原提示細胞上のPD-L1の影響を検討した。CD3陽性T細胞をCMV pp65由来ペプチドパルスした人工抗原提示細胞で刺激したところ、K562+CD80/86+PD-L1を用いた場合に、より多くのCMV-CTLが誘導された。K562細胞にわずかに発現するCD80の影響を排除するために、CRISPR/Cas9システムを用いてCD80の発現をノックアウトした上で、人工抗原提示細胞を用いてCMV-CTLの誘導を行ったところ、K562+PD-L1では誘導されるCMV-CTLは増加せず、K562+CD80/86+PD-L1を用いた場合にのみ有意な増加を認めた。このことから、PD-L1自体はCTL誘導に促進的に働いておらず、CD80/86とともにPD-L1が抗原提示細胞上に発現していることでCMV-CTLの誘導が促進されると考えられた。PD-L1はPD-1だけでなくCD80とも結合し、また、他のレセプターが存在する可能性もあり、PD-L1がCTL誘導を促進しているメカニズムは明らかではなく今後解明すべき課題である。また、K562+CD80/86+PD-L1は、健常人の末梢血より分離したT細胞から、腫瘍抗原であるWT1特異的CTLを誘導することも可能であったことから、腫瘍抗原特異的CTLを用いた細胞療法の開発において有用な人工抗原提示細胞となり得る可能性がある。
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