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2013 年度 実施状況報告書

ヒトリンパ球系分化の包括的解析と骨髄リンパ球ニッチの役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25461447
研究種目

基盤研究(C)

研究機関三重大学

研究代表者

大石 晃嗣  三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (00397506)

研究分担者 俵 功  三重大学, 医学部附属病院, 助教 (80378380)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードリンパ球系細胞分化 / ストローマ細胞 / LFA-1
研究概要

リンパ球系細胞分化におけるストローマ細胞との接着の役割について検討した。
1.Bリンパ球系細胞分化におけるストローマ細胞の役割:CD34+lin-CD45RA-ヒト造血前駆細胞をhTERT挿入不死化骨髄ストローマ細胞と共培養するとCD10+CD19+ proB細胞が分化するが、insertの挿入あるいはストローマ細胞の培養上清で培養するとproB細胞への分化が抑制された。培養で得られたCD7+CD45RA+とCD10+CD19-CD45RA+細胞についても同様に検討したところ、ストローマとの接着の阻害は、CD7+CD45RA+およびCD10+CD19-CD45RA+細胞からのproB細胞への分化を抑制した。B細胞分化にはストローマ細胞との接着が重要であることが示唆された。
2. Tリンパ球系細胞分化におけるLFA-1の役割:hTERTストローマ細胞においてICAM-1とICAM-2の発現がみられ、ICAMの受容体であるLFA-1の発現は、CD34+造血前駆細胞やCD7+あるいはCD10+リンパ球系細胞にみられた。ヒト造血前駆細胞をLFA-1の中和抗体存在下でストローマ細胞と共培養したところ、CD7+CD45RA+およびCD10+CD19+ proB細胞への分化が抑制された。次にCD7+CD45RA+とCD10+CD19-CD45RA+細胞を同様に培養したところ、CD7+CD45RA+からはCD7+CD45RA+細胞およびCD10+CD19+proB細胞が生成されるが、LFA-1抗体添加はその両方を抑制した。CD10+CD19-CD45RA+は主にproB細胞に分化したが、LFA-1抗体の添加によりほとんど影響されなかった。造血前駆細胞およびCD7+多能性前駆細胞からのリンパ球系細胞への分化にはLFA-1を介したストローマ細胞との接着が重要であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究により、Bリンパ球系およびTリンパ球系細胞分化におけるストローマ細胞および接着因子の役割に対して新しい知見を得ることができた。特に、LFA-1を介した細胞接着が造血前駆細胞および初期のTリンパ球系細胞の分化のおいて非常に重要な働きをしていることを示唆する興味深い知見が得られた。LFA-1は、分化したTリンパ球の抗原認識にも関与していることが知られている。今後の研究により、Tリンパ球系細胞の分化においてLFA-1を介した接着がどのような役割を持ち、T細胞の免疫学的な機能とどう関わっているのかが明らかとなれば、T細胞分化および機能の制御機構の一端が明らかになるものと思われる。
一方、Bリンパ球系細胞分化をストローマ細胞との接着が維持し促進することが明らかになりつつある。現在、ストローマ細胞との接着がB細胞分化を支持しているだけなのか、それともB細胞への分化を積極的に促しているのか、については検討中である。これらの研究は、リンパ球系細胞分化における細胞接着の役割とそのメカニズムの解明に繋がるものと思われる。

今後の研究の推進方策

1.B細胞分化におけるストローマ細胞の役割:
まず、ヒト造血前駆細胞からproB細胞への各分化段階の細胞を分離する方法を確立する。その上で、各分化段階のリンパ球系細胞の分化においてストローマ細胞がどのような役割を果たしているかをより詳細に検討する。そして、ストローマ細胞のB細胞分化の分子学的な制御機構を明らかにする。具体的には、EBF-1やPAX-5の発現をsingle cell PCR等を用いて解析することにより、一個一個の細胞レベルで明らかにしていく。
2.T細胞分化におけるLFA-1の役割:
まず、LFA-1のligandであるICAM-1, ICAM-2, ICAM-3に対する中和抗体の作用を明らかにする。次に、Delta-1発現OP-9 stromal cellsと共培養することにより、さらに分化したCD1a+やCD8+T細胞への分化におけるLFA-1の役割について検討する。さらにそのメカニズムについてsingel cell PCRなどを用いて分子学的に明らかにする。将来的には、ヒト造血前駆細胞をNOGマウスに移植し、LFA-1抗体の作用をin vivoで検討する計画である。

次年度の研究費の使用計画

試薬の費用等で使用したが、若干の残余金が発生した。
抗体などの購入の一部に使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Monocytes infiltrate the pancreas via the MCP-1/CCR2 pathway and differentiate into stellate cells.2014

    • 著者名/発表者名
      Ino K, Masuya M, Tawara I, Miyata E, Oda K, Nakamori Y, Suzuki K, Ohishi K, Katayama N
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 9(1) ページ: 1-12

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0084889

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Manipulation of human early T lymphopoiesis by coculture on human bone marrow stromal cells: Potential utility for adoptive immunotherapy.2013

    • 著者名/発表者名
      Liu B, Ohishi K, Orito Y, Nakamori Y, Nishikawa H, Ino K, Suzuki K, Matsumoto T, Masuya M, Hamada H, Mineno J, Ono R, Nosaka T, Shiku H, Katayama N.
    • 雑誌名

      Exp Hematol

      巻: 41 ページ: 367-376

    • DOI

      10.1016/j.exphem.2012.12.001

    • 査読あり
  • [学会発表] LFA-1-Mediated Adhesion Of Human Hematopoietic Progenitors To Bone Marrow Stromal Cells Enhances B-Lineage Differentiation Toward CD19+ ProB Cells, While The Generation Of CD7+CD56-CD45RA+ Multipotent Lymphoid and CD10+CD19- B-Biased Progenitors Is Supported By Soluble Factors Produced From Stromal Cells2013

    • 著者名/発表者名
      Minami H, Ohishi K, Nakamori Y, Masuya M, Katayama N
    • 学会等名
      55th ASH Annual Meeting and Exposition
    • 発表場所
      New Orleans, USA
    • 年月日
      20131207-20131210
  • [学会発表] ヒトリンパ球の初期分化制御におけるヒト骨髄ストローマ細胞の役割2013

    • 著者名/発表者名
      南 博仁, 大石 晃嗣, 中森 良樹, 鈴木 圭, 桝屋 正浩, 片山 直之
    • 学会等名
      第75回日本血液学会総会
    • 発表場所
      さっぽろ芸文館
    • 年月日
      20131011-20131013
    • 招待講演
  • [学会発表] ヒトB・Tリンパ球系細胞初期分化におけるヒトストローマ細胞の役割2013

    • 著者名/発表者名
      大石晃嗣、片山直之
    • 学会等名
      第72回日本癌学会総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      20131003-20131005
    • 招待講演
  • [学会発表] ROLE OF BONE MARROW STROMAL CELLS IN THE REGULATION OF HUMAN EARLY LYMPHOPOIESIS2013

    • 著者名/発表者名
      Ohishi K, Nakamori Y, Katayama N
    • 学会等名
      The 18th Congress of European Hematology Association
    • 発表場所
      Stockholm, Sweden
    • 年月日
      20130613-20130616
    • 招待講演
  • [図書] 血液内科2013

    • 著者名/発表者名
      大石晃嗣、門間文彦、片山直之
    • 総ページ数
      181-188
    • 出版者
      科学評論者

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公開日: 2015-05-28  

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