研究課題
本年度は本邦で見いだされたαIIbβ3の恒常的活性化変異であるαIIb(R995W)変異に相当するマウスαIIb(R990W)変異導入マウスを用いた検討を中心に行った。変異KIマウスにおいては、血小板数の軽度の低下とともに血小板サイズの有意の増大を認め、αIIb(R995W)変異を有する症例と同様に巨大血小板減少症が生じることが明らかとなった。血小板数低下の原因として、ビオチン標識血小板を用いた血小板寿命の測定を行ったところ、ホモKIマウスにおいては軽度ではあるが有意な血小板寿命の短縮を認めた(血小板半減時間:WT 29.0±4.3 hr, ヘテロKI 24.9±10.6 hr, ホモKI 19.5±2.3 hr)。また、定常状態において幼若な血小板である網状血小板数の低下を認めたことから、血小板産生障害の存在が示唆された。抗血小板抗体により誘発した血小板減少からの回復やトロンボポエチン投与後の血小板増加がホモKIマウスにおいては障害されており、これらの結果からもKIマウスにおける血小板減少の一因に血小板産生障害が関与していることが明らかとなった。また前年度の研究結果から、ホモKIマウスにおける血小板機能の低下が示されていたが、より生体内に近い条件下における血小板機能を検討するため、流動条件下でのコラーゲン上での接着および凝集塊形成を検討したところ、ホモKIマウスにおいてはWTやヘテロKIマウスに比べ著明な機能障害を認めた。また腸間膜動脈を用いた血栓形成モデルにおいても同様にホモKIマウスでは血栓形成の著明な低下を認めた。これらの結果からαIIbβ3の恒常的活性化変異は血小板機能障害を生じることも明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
現時点では、変異導入マウスを用いた研究を中心に、ほぼ予定どおり進行している。
今までの検討から、αIIbβ3活性化変異KIマウスにおいては、血小板産生障害が存在することが明らかになってきた。本年度はそのメカニズムを明らかにすることを中心に検討を行うことを計画している。従来、αIIbβ3は血小板産生には関与しないと考えられていたが、我々の結果はαIIbβ3の異常な活性化が血小板産生を障害することを示しており、αIIbβ3ノックアウトマウスと比較することにより、血小板産生のどの段階でαIIbβ3が関与しているのか、巨核球系コロニーの検討やproplatelet形成能を検討することによって明らかにすることを目指す。またどのようなシグナル機構が関与しているかの検討も行うことを予定している。
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