研究課題
基盤研究(C)
アナモルシンは、鉄・硫黄(Fe-S)クラスターを形成する分子として、Bリンパ球、マクロファージなどの免疫細胞の機能に関与している可能性がある。また、Picotと結合し、細胞内のシグナル伝達分子の活性化に関与している可能性がある。本研究では、アナモルシン遺伝子改変マウス、主にアナモルシントランスジェニックマウス(AM Tgマウス)を用いて、アナモルシンのBリンパ球、Tリンパ球、マクロファージの機能および細胞内のシグナル伝達への役割を詳細に解析する。さらに、Fe負荷状態でのそれらの細胞の解析も合せて行い、アナモルシンがFeのセンサーとして、免疫細胞の機能調節に関与していることを明らかにすることを目的としている。平成25年度は、主に、AM Tgマウスの脾臓から単離したBリンパ球をLPSによって刺激した際の細胞増殖およびシグナル伝達分子について検討した。LPSによるBリンパ球の増殖はAM Tgマウスが、WTマウスと比較して低下していた。また、LPSが、Toll like receptor4に結合したあとのシグナル伝達に関与するERK1/2とIκBのリン酸化がAM TgマウスのBリンパ球でWTマウスと比較して低下していた。アナモルシンの作用点を解析する目的で、AM TgマウスとWTマウスの脾臓から単離したBリンパ球をin vitroでLPSによって刺激した際の細胞から抽出したmRNAを用いてDNAマイクロアレイをおこない、遺伝子の発現変化を比較し、変化している遺伝子群からその上流にある分子を解析したところ、AM Tgマウスにおいて、WTマウスと比較してRasの活性が低下していることが示唆された。現在、Ras assayをおこない、AM TgマウスのBリンパ球でのLPSによるRasの活性化を検討している。
2: おおむね順調に進展している
アナモルシン過剰発現状態の生物学的意義を検討する目的にて、CAGプロモーターの下流にアナモルシン cDNAをつないだベクターを受精卵にトランスフェクションしたアナモルシントランスジェニック(AM Tg)マウスを作成した。そのマウスのBリンパ球機能を検討するためにマウス腹腔内にLPSを投与したところ、当初はWTマウスと比較してBリンパ球が過剰に増殖反応すると予想したが、結果は逆となり、WTマウスに比べLPSへの反応性が弱いことが判明した。また、Bリンパ球の細胞内シグナル伝達分子の活性化を蛋白のリン酸化を指標に検討したところ、アナモルシン TgマウスのBリンパ球ではLPS刺激の細胞内シグナル伝達に関与するERK1/2やIκBのリン酸化の明らかな減弱を認めた。さらに、アナモルシンの作用点を解明するために、AM TgマウスとWTマウスから単離したBリンパ球をLPSで刺激し、mRNAを抽出してDNAマイクロアレイをおこない、AM TgマウスとWTマウスのBリンパ球における遺伝子の発現変化を比較し、変化している遺伝子群からその上流にある分子を解析したところ、AM Tgマウスにおいて、WTマウスと比較してRasの活性が低下していることが示唆された。現在、Ras assayをおこない、AM TgマウスのBリンパ球でのLPSによるRasの活性化を検討している。以上の研究結果から、これまで不明であったアナモルシンの作用点が初めて明らかとなった可能性がある。
(1)AM Tgマウスの免疫能の評価:AM Tgマウスの抗体産生能を指標として、免疫能の評価を行う。(2)AM TgマウスへのFe負荷モデルにおける免疫細胞の評価:アナモルシンがFe-Sクラスター形成に関係する分子であること、Fe-Sクラスター蛋白の1つであるIRP-1の発現量を調節し、細胞内へのFeの取り込みを制御していること、アナモルシン欠損細胞においては、細胞内に自由Feが多く存在し、さらにROSの蓄積が見られることから、アナモルシンは細胞内のFeの代謝に重要な役割を果たしていることが考えられる。AM TgマウスにFeを負荷し、細胞内のFeの状態に変化を認めるかどうかをBリンパ球、Tリンパ球、マクロファージの細胞内自由FeやROSの量を測定することと、それら免疫細胞の機能を評価することで解析する。(3)AM Tgマウスにおける炎症状態でのFe動態の評価:炎症状態においては、肝細胞からのヘプシジンの分泌が亢進し、腸管上皮細胞に作用しFeの吸収が阻害されることが知られている。また、細胞内へのFeの取り込みが阻害され、Feの利用障害がおきる。AM TgマウスにLPSを投与し、炎症状態でのヘプシジンの量やFeの動態、赤血球造血を評価し、アナモルシン過剰状態がin vivoでのFe動態に与える影響を解析する。
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Leuk Lymphoma
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