研究課題
アナモルシン(anamorsin; AM)は、当初、抗アポトーシス分子として我々の研究室で単離した分子であるが、最近では、鉄・硫黄(Fe-S)クラスターを形成する分子として、Bリンパ球やマクロファージなどの免疫細胞の機能にも関与していることを明らかにしてきた。本研究では、平成25年度(初年度)には主にAMトランスジェニック(Tg)マウスの脾臓から単離したBリンパ球を用いて検討したところ、LPSで刺激すると、正常Bリンパ球と比較して、むしろ増殖が低下していることが判明し、DNAマイクロアレイやウェスタンブロットなどの結果から、AMを過剰発現しているBリンパ球ではLPSによるRASの活性化が低下し、その下流のシグナル伝達分子であるERK1/2およびIκBのリン酸化が低下していることが判明した。平成26年度は、AMコンディショナルノックアウトマウスを作成し、CD19-Cre Tgマウスと交配することで、CD19陽性Bリンパ球のAMの発現を欠損させた場合のBリンパ球について検討した。その結果、末梢血、骨髄、脾臓の各分化段階のBリンパ球の数を調べたところ、成熟したBリンパ球の数が有意に低下していることが判明した。このことから、Bリンパ球の成熟・分化にAMが必須であることがわかった。また、その残ったBリンパ球をLPSで刺激すると、正常Bリンパ球よりも増殖が強い結果が得られ、AM TgマウスのBリンパ球のデータと合わせ考えると、AMはLPSによる刺激をネガティブに制御していることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
AMコンディショナルノックアウトマウスが予定通り作成され、Bリンパ球のAMを細胞特異的に欠損させる目的でCD19-Cre Tgマウスと交配させたところ、成熟したBリンパ球の減少と、残ったBリンパ球のLPSへの反応が亢進しているという、これまで継続しておこなってきた研究の成果と一致するデータが得られたため。
今後は、AMコンディショナルノックアウトマウスを用いた実験を精力的におこなっていく予定である。特に、平成26年度に作成したBリンパ球特異的にAMを欠損させたマウス(CD19-Cre Tg-AM Flox/Floxマウス)を用いて、Fe負荷時の免疫能の評価をおこなう。すなわち、CD19-Cre Tg-AM Flox/FloxマウスにFeを負荷し抗体産生能の亢進やさらにLPS投与時の炎症所見の亢進がみられるか検討する。また、今年度の研究では新たに、CD3-Cre TgマウスとAMコンディショナルノックアウトマウスを交配することで、Tリンパ球特異的にAMを欠損させたマウスも作成し、最初にTリンパ球の成熟・分化におけるAMの機能を検討した上で、そのマウスでの免疫反応を検討する予定である。
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