研究課題/領域番号 |
25461452
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中沢 宗健 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00535958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 炎症性貧血 / ヘプシジン / リウマチ / IL-6 / TNFa / tocilizumab / BMP |
研究実績の概要 |
慢性炎症性疾患では病勢と貧血の程度が相関することが多い。炎症性サイトカインによるヘプシジン(hepcidin)の産生が慢性貧血に関与するとされているが、機序解明されていない。本研究の目的は、炎症生体におけるサイトカインによるhepcidinの発現機序を分子レベルで解析する。本年度は、IL-6、BMP、TNF-aなど複数のサイトカイン刺激後による異なるヘプシジンの発現機序を転写レベルで解析した。 結果:1. 肝細胞株を用いてリアルタイム定量的RT-PCRの系で、IL-6とBMP2によるhepcidinの発現誘導は、TNF-aの刺激により、dose dependenceで抑制された。 2. hepcidinプロモーター 5'末端側から種々長さのdeletion constructまたsite-mutagenesis constructをpGL3ベクターに組み込んで作ったルシフェラーアッセイ系の検討で、 hepcidinプロモーター上に特定の結合領域がTNF-aによるhepcidin発現抑制で必須であることが分かった。 3. ヒト化抗IL-6受容体抗体(tocilizumab), Jak2阻害剤(AG490)、MAPKの阻害剤(U-0126)などを用いて、肝細胞におけるIL-6刺激後のhepcidinの発現を検討したところ、IL-6によるhepcidinの産生はtocilizumabによって完全に抑制され、AG490が部分的に抑制した。一方、U-0126はIL-6によるhepcidinの発現を抑制せず、逆に増強させた。すなわち、IL-6シグナル下流に位置するJAK/STAT3系はhepcidinの発現を増強させるが、MAPK/CEBPbeta系は抑制傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの検討結果は、炎症性サイトカインIL-6によるhepcidinの発現増強、またはTNF-aによるhepcidinの発現抑制に関与する各自の独特な転写因子が複数存在することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度に引き続き、in vitroでヘプシジンのプロモーター発現機構を解析する。前年度の結果から得たヘプシジン負の制御におけるTNF-aの関与について、ルシフェラーアッセイ、IP-Western blot、EMSA, RNAi等の実験を用いて関連転写因子を同定する。
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