研究課題
我々は、日本全国の医療機関からのADAMTS13検査依頼を通じて、血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy: TMA)患者の集積を行っている。その総数は、2014年12月まで1323例と、世界でも類を見ないデータベースとなった。その中で、造血幹細胞移植後(stem cell transplantation: SCT)後にTMAを発症した症例を88例経験した。これらの症例でADAMTS13活性が10%未満の症例は4例で、そのうち5%未満は1例であった。現在の血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura: TTP)の診断基準は10%未満となっており、SCT-TMAでADAMTS13活性著減例について今後集積を続け、TTPとの異同について解析を行う予定である。上記の症例は1ポイントのみの解析であったので、経過を追って検体集積が可能であった症例について、von Willebrand 因子(VWF)マルチマー解析を行った。多くの症例でTMA発症前に超高分子量VWF重合体(unusually-large VWF multimers)を認め、TMA発症時に高分子量のVWFマルチマーを欠損しvon Willebrand病と同様の病態を呈している症例も観察した。これらのVWFによる診断には時間がかかるため、血液中に存在する血管内皮細胞を検出することで早期診断を行い、SCT-TMAの早期治療を行うことを計画している。血管内皮細胞の検出には、フローサイトメトリー法を用いて流血中の脱落内皮細胞検出法を検出する方法を確立した。この方法を用いれば、全血2mLより平常時でも10個以上の血管内皮細胞を検出することが可能であり、TMAやVODなど血管内皮細胞障害によるとされている種々の病態での基礎解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
症例の集積や血管内細胞障害のフローサイトメトリーによる解析方法については、おおむね順調であるが、移植前より複数回採血できた経過観察症例の集積が遅れている。
このまま計画を進めるが、TMA発症前から検体保存ができる症例を増やすために、自施設内での検体収集を移植前から積極的に行う予定である。
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