特発性造血障害は、再生不良性貧血などの骨髄不全症候群(BFS)における致死的病態の一つであり免疫機序の関与が指摘されている。本邦で比較的高頻度に発生するため、その対策は急務である。我々は、特発性造血障害の発生にストレス誘導型NKG2D免疫が重要な役割を演じると指摘してきた。 我々は、今回BFS患者の血漿中に遊離型NKG2Dリガンドの病的発現を見出したため、NKG2Dリガンド発現と臨床病態との関連性を比較検討した。解析したBFS患者の約半数に遊離型NKG2Dリガンド発現亢進が見られ、血球減少を伴っていた。また、遊離型NKG2Dリガンド(患者血漿および精製ペプチド)をNKG2D発現免疫細胞に添加したところ免疫細胞上のNKG2D膜発現はdownregulationし、NKG2Dリガンドを発現するTリンパ系腫瘍細胞(Jurkat cells)への細胞傷害は抑制された。我々はこれまでに膜型NKG2DリガンドはCD34陽性血球にも発現し、膜型NKG2Dリガンドを発現する血球は、NKG2D受容体陽性リンパ球に傷害されることを見出している。今回の結果を合わせると、NKG2Dリガンドは膜型によりNKG2D受容体陽性リンパ球が活性化され造血障害を促進し、遊離型でその細胞傷害は抑制される。膜型および遊離型NKG2Dリガンドは、特発性造血障害患者血液内に単独または共存の状態で見られ、膜型と遊離型が共存する症例の方が有意に造血障害が強く生じていた。つまり、遊離型NKG2Dリガンドは特発性造血障害の免疫病態を直接反映する指標であり免疫介在性造血障害を抑制する可能性が示唆された。
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